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3.KHJL~インドネシアの村から世界へ

熱帯林トラスト(TFT)インドネシア代表  ハルトノ・アディ・プラボオ氏

TFTは、コミュニティレベルでの森林経営プロジェクトをインドネシアのスラウェシ島、クンダリ市の近くで実施しています。この地方では、1970年代に政府が州有地でのチーク植林を始め、同時に地域の住民も自分たちの土地でチーク植林を始めました。しかし、98年の政治改革後、州有林の森林管理者が不明になり、2000年頃には違法伐採が横行するようになりました。

その後、違法伐採をなくすために州有林を管理しようと地元の人たちが立ち上がりました。州有林管理をするためには、森林管理者は法的に認められた組織でなければなりません。そこで住民は2004年にKHJLという協同組合を結成し、その管理者となるための申請をしました。同じ年に、TFTはこのコミュニティに、FSC(森林管理協議会)材をTFTメンバーに供給するために協力を依頼しました。このようにしてFSCの認証取得を彼らの私有地で目指すことになりました。2005年にはこの私有地においてFSC認証を取得しましたが、KHJLがもともと管理しようとしていた州有林の管理ライセンスは未発行のままです。

KHJLがFSC認証を得るまでには、さまざまな障害がありました。個人の森林所有者が何千といて、一人あたりの取扱量が最大で10m3ほどと非常に少ないことでした。また、コミュニティから地元のバイヤー、そして大きな取引業者、それから工場へというような長く複雑なサプライチェーンがありました。買い手優利の状況で、個人所有者は低価格で売らなければならない構造でした。さらにまた、これらのチークは私有地のみから供給されるために、市場と政府に対しての正当性が認められない状態でした。

NGOからの支援
FSC認証取得に当たり、KHJLは第三者からの助けが必要になりました。例えば、管理と経営をするための能力を養ってくれる組織、汚職がないように透明性やモニタリングのトレーニングをしてくれる組織などです。持続可能な森林管理がなされていなければ、そのためのキャパシティビルディングも行う必要があります。また、立ち上げ資金をどうするかということも考えなければなりません。

JAUHという地元のNGOは、政府の伐採権の発行の担当者と連絡をとったり、グループでの意思決定の方法や汚職防止の透明性に関してのトレーニングを提供し、支援を行います。一方、TFTは木材ビジネスや認証取得のためのトレーニングを行います。また、実際の製品を国際市場で売るためのFSCチークを求めるバイヤーとの連絡をとるお手伝いもします。

このように、協同組合をつくることによって、話し合いの場で意思決定し、グループで販売する、利益はメンバー間で共有するという構造をつくり上げました。州有林管理のライセンス取得や、合法性を証明できる条件をそろえていくことやFSC認証取得のためのプロセスも簡単になり、サプライチェーンは改善されました。個人経営者は協同組合に売り、協同組合はそれを直接に工場に売るので、大きな取引業者も地元バイヤーも必要なくなるわけです。経営者は、以前は自らの所有する範囲ですべての木を切って地元バイヤーに売っていましたが、今は協同組合全体としての在庫を考えるので、全部自分のところで供給する必要はありません。地方レベルではなく、それぞれの経営者の土地という小さい地域レベルで持続可能性が実現できるわけです。

そもそもこの試みは、小さい12の村で始まりました。どのように持続可能な森林管理を行っていくのかなどの森林管理のルールをつくり、また協同組合や企業経営についてトレーニングを行いました。そして1年後、12の村が審査を受けて、2005年の5月にFSCの認証を受けることができました。

グループでの仕組みづくりが成功のカギ
認証を得た後のメリットとして、1点目はより良い価格で売ることができるようになったことが挙げられます。サプライチェーンが簡潔になったことや、需要が以前よりも増えたためです。2点目は、たとえ量が少なくても、市場につながることが可能になりました。そこでのバイヤーは、FSC認証製品でCSRを満たす木材を売ることに重きを置いています。3点目は、政府や市場における信頼性が向上したということです。それに付随して、市場に関する情報、とくに国の政策の議論や情報にアクセスできるようになったということがあります。今では協同組合の地元の人たちは、インドネシアにおけるコミュニティ林業経営をテーマにした政府レベルの会合に招待されて話すことがあります。

現在22の村がこの協同組合に参加しています。FSCの監査は、2006年、2007年ともに通過しました。協同組合の組合員には毎年配当金が分配され、自分たちのローンも徐々に返しています。そして、国際市場で製品を販売している三つ以上の国内工場と契約しています。協同組合はビジネスを拡大することも可能です。廃材品から工芸品を作る計画や製材所を作ることなどを話し合っています。また、同じサプライチェーン構造をアグロフォレスト製品に導入して売るということも考えています。

成功のカギは、グループという構造です。グループをつくることにより、個人では難しかったサプライチェーンの簡潔化や、市場へ直接アクセスするといったことが可能になりました。ほかの機関と強いパートナーシップを築き、トレーニングやモニタリングをすることもできるようになりました。そしてまた、この森林管理のルールづくりの計画と実行を自分たちの手で実施することができます。協同組合の中で、持続可能な森林管理についての手続きを定めるのです。そのようにして持続可能な森林管理は達成され、FSC製品は適正な市場、ニッチ市場につながっていくことができます。市場は小さいかもしれませんが、持続的に、そして柔軟に、環境に配慮した木材を供給し続けることができるのです。

インドネシア・スラウェシ島で、TFTが支援するコミュニティは森林認証を取得し、持続可能な管理がされたチーク材を国外の市場へ提供している (写真提供:TFT)

※(財)地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』2008年9月号(214号)より転載

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