ENGLISH | 日本語
トップ>ニュース>メールマガジンバックナンバー第33号>熱帯諸国のコミュニティ林業の認証とその木材製品の市場開発

1.熱帯諸国のコミュニティ林業の認証とその木材製品の市場開発

地球環境戦略研究機関(IGES)森林保全プロジェクト ヘンリー・スケーブンス 氏

アジアの熱帯諸国でコミュニティ林業がどこにあるかというと、ネパール、ラオス、インドネシアのスラウェシ島、それからパプアニューギニアやソロモン諸島にあります。多くのコミュニティ林業に対して認証が与えられていますが、認証取得後、審査機関により認証を取り消されたところもあります。また、森林経営している側が認証をやめるということもあります。つまり、森林の認証というのは取得するのも難しければ、維持していくことも非常に困難を伴うものであるということです。

森林認証を取得するためのステップ
では、森林認証を取得するためにコミュニティ林業でコミュニティ(村落共同体)は具体的に何をしなければいけないのでしょうか。まず、組織化して、森林の境界を確定し、土地利用・管理計画を策定します。森林のインベントリーを調査し、木材伐採計画を立てます。木材を伐採、製材、そして運搬します。さらに村の木材企業を設立し、運営します。

パプアニューギニアの例を一つ挙げます。Foundation for People and Community Development(FPCD)という団体が開発したモデルです。このモデルによると森林認証を取得し、維持し、運営していくためには、18の複雑なステップがあります。最初の五つのステップは準備作業で、まず 持続可能な森林管理について学び、それを受けてコミュニティがFPCDへ認証取得を試みたいという要請をします。それから基礎的な森林の調査をし、コミュニティの中に団体を組織・登録し、フィージビィリティスタディを行います。

そして、ステップ6~12は、能力開発で、森林管理のトレーニング、土地利用地図の作成、森林のインベントリー調査、森林管理計画や伐採計画の策定、伐採や運営のトレーニングなどです。これらは、能力開発であると同時に大きな方向づけも行っています。これらのトレーニングをしていく上で、森林そのものが認証を受けられる状態にならなければなりません。そして、ビジネスプランを作った後、認証の申請を行い、それがうまくいけばマーケティングを行います。現実には、多くの努力と資金の投入、そして真剣な姿勢で取り組むことにより、認証までたどりつくことができます。ここまでのステップが大変です。最後は、支援団体であるFPCDが支援から退くための確認作業があります。

パプアニューギニアで2番目にFSC認証を受けたのが、Forest Management and Product Certi-fication Service(FORCERT)です。ここは、課題となっている認証材の供給量を確保するために、村人による木材生産をサポートしています。というのも、認証材の供給量の確保が問題になっているからです。FORCERTは、村人や生産者の生産能力向上を支援します。例えば、伐採、運搬、乾燥などの指導を行ったり、移動手段の交換部品や燃料や必要機材なども提供します。また、国際的な市場への橋渡しも行います。さらに最近では、マイクロ・ファイナンスサービスも始め、村人が自ら林業を営むに必要な機材などを購入できるような仕組みをつくっています。

小規模のコミュニティ林業に見合った要求を
単にバイヤーが、国際的な市場でコミュニティ林業から出てくる認証材を探しても、必ずしも安定的な持続可能な供給源を見つけることはできません。バイヤーは生産過程にも積極的に関与していく必要があります。良い例がオーストラリアのウッデージです。この会社はオーストラリアで初めてFSC(森林管理協議会)のCoC(流通・加工過程)認証を取得した会社です。ソロモン諸島やパプアニューギニアのコミュニティ林業で生産された木材を購入しています。そして、熱帯諸国でのコミュニティ林業で認証を受けた木材を熱心に促進しています。

パプア・ニューギニア、東ニューブリテン州マウナ村のFSC認証林を取得したコミュニティメンバー。後ろにあるのは、移動可能な製材機。FSCラベルが付く輸出用製材は、ここで製材され、水牛を使い海岸まで運ばれ、小屋で天然乾燥され、船に積まれる(写真提供:ヘンリー・スケーブンス)

さらに認知度の低い樹種の市場開拓を行っています。認証材について考える際には、認証された森林管理を考える必要があります。森林が市場に何を提供できるのかということを考えなければなりません。ウッデージは、認知度の低い樹種を開発するに当たり直面するリスクや費用負担を担っています。最後に、彼らは、経営的に健全な中規模の企業であると自らを説明しています。つまり地元コミュニティを支援している慈善団体ではないということです。

コミュニティ林業では、木材の供給量は小規模です。大規模林業と市場での競争力はありません。ですから成功するには、ニッチ市場を見つけることがカギです。それから、バイヤーは予期せぬ事態が起こりうることを理解し、そのような問題を解決する努力をする必要があることを覚悟しておかなくてはいけません。

※(財)地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』2008年9月号(214号)より転載

< 記事1 | 記事2  | 記事3 >


2009 FAIRWOOD PARTNERS All Rights Reserved.