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1.FSC認証の家づくり ~西倉工務店

西倉 正三さん/西倉工務店代表取締役

~ フェアウッド建築セミナー2006 in仙台 講演録 その1 ~

図1 認証材を利用した木材でできた堰
(西倉氏発表資料から)
地域おこしの一環で認証取得へ
 FSC認証の家づくりについての話ということですが、家だけでなく、FSCのCOCという材を大量に使いながら、いろいろなもの、例えばダムや小物なども作っています。

 わが社のCOC(流通・加工管理)認証の取得の経緯ですが、わが社が取得する1年前に岩泉町と長野県に本社のある吉本岩泉事業所の所有林が取得したんです。

 地元の材を使おうということで一緒にやってきた方なんですが、もともと地元には周りに製材所がないものですから、「使う側が認証を取らないと流通しないよ。他県にも認証を取得したところはあるけれど、運搬にそこまでお金をかけたりするとコストも下がらないから、あなたも取ってほしい」と話をもらいました。

 この町は全国的に見ても広く、山や森林の面積も広い。また、龍泉洞という鍾乳洞の洞窟から出ている水を町水に使用しているんですが、その水が世界の水コンクールで金賞を取って勢いづいている。そして岩泉はマツタケの生産でも有名な所でもあるので、そういうことを関連して位置づけて山を守っていくために、そして岩泉のためにやってみないかと言われました。

 わが社の所在は宮古地方で、本州最東端です。会社発足時から地元の山から切りだされた広葉樹、針葉樹を地元の製材所で挽いて、天然乾燥をして使っていました。しかし、昨今は保証の問題もあるもので人工乾燥をしています。ただし、岩泉町では乾燥機のない製材所と懇意にしているものですから、乾燥工場のある宮古まで木材を運搬して、また岩泉に持ってくるという状況です。

 最近の住宅は小民家風の建物が多いんですけれども、昔から私は田舎に住んでいるものですからそういう形が多く見られて、当初は土台、柱、そして梁にまで栗を使っていたのです。梁はもちろんあらわして、梁の上に羽目板を張って、その上に製材所からただでもらってきたおがくずに石灰を混ぜてビニールを敷いて断熱材など床の上を押さえて、その上に36~50mmの厚板をだいたい3尺間隔で背張りをせずに敷いて小根太にして、やってきたんです。

 最近は、私が昔からやってきたこの方法が受けて、皆さんから「裸足で入ってもあったかくていいねえ」と言われるんですよ。塗料は前から米ぬかを塗ったり、漆の実をすりこんだりしています。最近私が凝っているのが、ラベンダーが入っている蜜蝋をすりこむことです。においも良くて、子供たちが「蜜蝋だからかじってもいいんだよね、おじちゃん」と言うくらい気に入ってくれています。

 岩泉町では、町内産の材料を使用して家を建てると、木材10m3以上、床面積が30m2以上で、30万円の補助金を出してもらえるんです。町外の人の場合は、一人5万円出すことになっています。2002~2006年までに、私ばかりではありませんが、51棟の住宅が補助金を受けて町内産材の材料を使って建てられています。「大工さん、昨日までカラスが止まっていた木ではないですよね」とよく言われるんですよ。神社やお墓の隣から切った木は、とにかくお客さんが嫌うものですから、そういう山から出てきていないという証拠をお客さんに示して、お客さんから信頼を得ています。

家ばかりではなくダム工事にも認証材を活用
図2 カラマツの認証材をふんだんに利用した住宅の内装(1)(西倉氏発表資料から)
 住宅ばかりではなくて、公共工事にも木材を提供しています。県でも堰に木材を使いたいということで2~3年がかりで研究をして、結局4ヵ所で認証の材料を使ったダムが作られています。

 水質浄化を行うために、吉本林業で木炭を焼く釜を設けて、認証木炭を焼いて、それを治水ダムの真ん中の水の通るところに入れたんですよ。1年後に調査をしたところ、私も行ったのですけれど、ダムの正面に砕石などの影響で草がたまったのかと思ったら、鳥が巣をかけているんですよ。涙を流すほどうれしかったです。

 やはり、それだけ環境が良い、認証の木材を使ったせいではないと思いますが、鳥が好んですむ環境づくりに役に立ったのかなと思いました。鳥だけではありません。炭を通して流れてきた下流側には、イワナが見えるくらいに泳いでいるんですよ。虫も異常なほどが多いと言っていました。鉄とコンクリートのダムがその沢にもいっぱいあるんですけれど、そこを一緒に調査したところ、木の堰とはぜんぜん違うんですよ。

 隣にある緑資源機構の事務所と一緒に巣箱ももう数え切れないくらい認証材で作って、子供たちと一緒に取り付けたりしました。また、のり面に崩落がないように認証材の丸太を使ったりと、いろいろな方面で認証材を使ってもらっています。認証林で4m×2mの看板が一番目立っています。岩泉町では収集ごみボックスにも認証材を使っています。1台設置費込みで3万円前後くらい。550台前後、製作しました。認証のはんこが大きくぼんと押してあるものですから、「これは何ですか?」とよく聞かれて、役場で認証についての説明書を付けたりしています。

図3 カラマツの認証材をふんだんに利用した住宅の内装(2)(西倉氏発表資料から)
みやこ型住宅で地域材・認証材を普及
 6年前に「宮古・下閉伊ものづくりネットワーク」が4部会(漁業、工業、農業、林産部会)で立ち上がり、私は林産部会で活動してきました。住宅部門だけではなく、間伐材の利用促進する部門にも首をつっこんでいます。そこで出てきたのが、間伐材を利用したごみボックスやペレットストーブです。

 休みとか夜などに時間をみつけてはあっちこっちに電話をして、取り付け料金はただにするので取り付けてみませんかと呼びかけているので、結構台数が増えています。ごみボックスも、人気が結構あって、岩手県庁に2台、宮古振興局に2台、宮古駅に1台、岩泉の事務所に1台、岩泉町役場にも1台といった具合です。プレゼントするものは私が製作しているものですから、時間がかかっていますが。

 ものづくりネットワークの林産部会では「太陽の森」と名づけて、地域で生産される木材・建築関連資材を使用し、地域特有の気候を生かした「みやこ型住宅」を立ち上げました。発足当時は1棟ずつだったのですが、今は年に2棟ずつモニター料(1軒当たり30万円)を出しています。

 みやこ型住宅は今までの5年の間に30数棟、建てられました。私はみやこ型住宅の中で、地域材の利用が80%以上、柱や梁、羽目板や木が見えるようにすること、薪やペレットの暖房機を使うことなどを盛り込んだ住宅にはケヤキのプレートが贈られます。私はこれまでに十数枚もらっています。

認証材をより多く使うために
図4 認証材を使った分別ごみ箱。岩泉町では500台以上が使われている。
(西倉氏発表資料から)
 これまで100%認証材を使った住宅を扱ったのは1棟だけでした。70%以上であれば認証住宅ということなんですが、なかなかそうはいきません。認証材を使用した建物はあわせて14棟になります。木材の量にすると、住宅だけで630m3、土木工事をあわせると1,500m3になるはずです。住宅では、床板、天井、壁、階段だけではなく、げた箱や食器棚を作ってあげることがよくあります。「環境に良い、役に立つ」と伝えるとお客さんにも喜んでもらっています。

 今後も認証材を多く使うような営業を展開して、なるだけ多くしていくつもりです。なかなか町内ばかりでは量が決まっているので、県内の他の地域でも手がけていきたいと思っています。去年は北上方面からも要望があって100坪くらいの公民館を建てさせてもらいました。また現在、3~4棟、盛岡方面でもやっています。



 これからも認証林を多く使って、生態系の整備の取れた山づくりに貢献したいと思っています。
(2006年10月18日 仙台市内にて)


> (株)西倉工務店 WEBサイト http://nishikurabuilding-co.ftw.jp/
                        
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