ENGLISH | 日本語
トップ>ニュース>メールマガジンバックナンバー第24号>増える中国の木材需要と中露国境の木材貿易

1.増える中国の木材需要と中露国境の木材貿易

神奈川県自然環境保全センター専門研究員/総合地球環境学研究所アムールオホーツクプロジェクトメンバー
山根 正伸

~ グローバルネット194号(2007年1月)から転載 ~

 今日は、世界最大の森林国ロシアの木材貿易について、日本に代わって第1位の輸出先となった中国に焦点を当ててお話しします。ロシアの森林と中国の木材業者の間でどのような取引が行われているかはあまり知られていません。しかし、ロシアの森林伐採や森林火災の加速要因であり、その背景のアムール川沿い、北東アジアの人間活動は、北太平洋の生物生産に大きな影響を及ぼしています。

林産物消費が急増する中国
図1 中国原木輸入の推移(1996~2004年)
(山根氏講演資料より)
 中国の林産物の需給を見てみると、それぞれ合計は約3億m3で、需要面では建築用が1億m3、紙・パルプは7,500万m3、製品輸出は4,000万m3を占めています。一方、供給面では輸入が1億m3と全体の約3分の1を占めていて、一時期の日本のような様相を示しています。

 中国の木材消費の推移は統計が不確かなのですが、1988年から2004年まで約2億m3強で推移していましたが、2005年には3億m3強と急増しています。そして2015年の予測値は4億m3強で、今後かなりの勢いで伸びていくものと予測されます。

 中国林産物の輸入量の推移を見ると、2005年の輸入量は1997年の3倍にも達し、丸太が大きな割合を占めています。最近、輸入量の予測が出ましたが、2015年は少なめの予測で2億m3、多めの予測では6億m3と大きく膨れ上がっています。北京オリンピックを控え、日本の高度経済成長期のような状況です。

 林産物の主な輸入国は日本の場合は熱帯国でしたが、中国の場合は隣国のロシアであり、2005年のシェアは丸太が約7割、全体でも5割を占めており、ロシア材に大きく依存していることがわかります(図1)。

 中国の森林資源は森林面積1億7,500万ha、森林被覆率は18.2%で、主に東北部、西部、南部に偏在しています。森林の過伐や農地への転換などで森林は荒れており、1998年には大洪水に見舞われました。そこで中国政府は森林保護政策「天然林保護プログラム」を実施しました。それにより、国内材の供給は急速に減りましたが、需要は増えているので、当然輸入材の供給が急増しているのです。

国境を越えるロシア材、中露木材貿易の実態
図2 中露木材貿易最大の国境港・綏芬河貨物新駅の様子(2003年10月撮影)
 1999年以降、原木を中心としたロシア材の輸入が急増しています。2004年のロシア産の丸太の輸送量は9割が内モンゴルと東北部を通じて輸入され、一部は海路を通じて沿岸部に運ばれています。輸入企業の8割は私営企業です。

 流通経路(右図)は国境のスイフンガ(綏芬河、黒龍江省)、マンシュウリ(満州里、内モンゴル自治区)、ニレンホト(二連浩特、内モンゴル自治区)などの一次木材卸売市場を通じて各省都、都市、主要木材集散地にある二次木材卸売市場に卸され、最終ユーザーに渡ります。最終ユーザーが直接ロシアに乗り込んで買いつけるというルートもあります。

 一次市場である満州里の場合、取扱量は全国2番目で、全体の9割はアカマツが主体の原木です。多くは丸太のまま、一部は板材に加工して、東北、華東、華北、華中などの地域に輸送しています。



 また二次市場の山東省徳州市は改革開放以前に東北産木材の集散地でしたが、現在は主要なロシア材の集散地です。満州里経由の木材の約3割、ロシア輸入材の約1割を取り扱い、多くは周辺地域で販売・消費されています。

 2004年のロシア輸入原木の樹種別内訳はアカマツが5割、カラマツ1割と針葉樹が大半を占め、広葉樹も8.49%を占めています。針葉樹材は建築、住宅内装などに広く使われ、硬質広葉樹材は床材や窓枠、軟質広葉樹材は合板芯材や割り箸などに使われています。

 硬質広葉樹の多くは沿海州産と推察され、綏芬河を筆頭にウスリー川沿いの中小国境港でほとんど取引されています。違法伐採木材の取引は中小港でも行われていると思われますが、調査が行き渡っていません。2004年上期の綏芬河における輸入丸太のうち、広葉樹は88万m3で針葉樹の半分程度ですが、取扱額は1億2,200万ドルで、針葉樹をしのいでいます。取り扱い樹種もヤチダモ、ミズナラなど高額材が多いのが特徴です。

 一般的に国境の中国側の方がロシア側より道路は整備され、税関の整備も進んでいます。二次市場の原木の一部は日本に輸出されていますが、ここ5年の間に23のJAS規格認定工場が操業を始め、ロシア材を日本の規格に合わせて輸出するなど、加工貿易が主流となっています。
図3 アジアにおけるロシア材輸送ルート(2002年)
(山根氏発表資料から)

多様な形態ロシアの違法材、始まる輸入国側の対策
 違法伐採問題に国際的定義は存在しませんが、一般的に各国の法律に反して行われる伐採を指すもの、そして違法伐採は各国における持続可能な森林経営の取り組みを著しく阻害するものと考えられています。

 ロシアからの輸入材には、伐採時における盗伐、禁止樹種伐採、規則無視・違反などの狭義の違法伐採から集材・輸送・加工・通関における違法材混入、虚偽書類作成、脱税などの広義の違法伐採があります。ロシア側のレポートによると、違法伐採の割合は極東において一番高く、全体の5割から7割に達すると言われています。違法材による利益は高額材ほど高く、違法アカマツ30ドル/m3に対し、違法ヤチダモは200ドル/m3以上にも達すると考えられます。

 これに対し、ロシア側には取り締りの強化(監視・査察など)、合法証明の導入(タグやホログラム)、製品輸出の奨励、森林認証の導入、輸入国側にはグリーン調達導入(原料遡及調査など)、国産材利用拡大、森林認証導入があります。輸入国側の対策はすでに始まっており、消費者の関心の高まりは、現地対策を後押しするものと思われます。
(2006年9月26日持続可能な原材料調達連続セミナーより)
                        
  TOP▲
  < 記事1 | 記事2  | 記事3 >

※このページを印刷する場合は、ブラウザのページ設定にて上下左右の余白を 5mm に設定することを推奨します。

2009 FAIRWOOD PARTNERS All Rights Reserved.