フェアウッド・パートナーズ
世界のニュース フェアウッド・パートナーズについて 過去のメルマガ記事など 資料室へ サイトマップへ リンクへ
フェア-な木材を使おう
「今、我々が出来ることは何か?」 〜智頭杉印鑑の商品化で国産材の利用促進と外材の輸入削減を〜(後編)
(株)永江印祥堂 営業企画室 福間 敏之 氏

※前編からの続き

品質へのこだわり その1 〜杉材の特徴
次に、印鑑の形状加工を試みた。従来、杉は柔らかく、年輪目(早晩材)に、夏に成長した夏目と呼ばれるもろいスポンジ状の部分(早材)と、冬に成長した冬目と呼ばれる堅いプラスチック状の部分(晩材)を持ち、その密度差が非常に大きいためため、印鑑として必要な印面の堅さと均質性を満たすことができないとされてきた。

また、印鑑の形状で最もポピュラーである円柱や瓢箪形、角柱等に加工する際に、もろいスポンジ状の部分(早材)がポロポロと欠けてしまうという問題点もあった。 木材に詳しい木材メーカーに相談したところ、「針葉樹の円柱加工など不可能」といわれるほど、針葉樹を用いた印鑑の形状加工は無謀なことらしい。

一方、建築材や木工品にとっては、針葉樹の持つその密度差は、弾力性や防音性、調湿機能面で価値を高めている。 建築材や木工品にはプラス要素となる針葉樹の密度差も、緻密性が必要不可欠とされる印鑑には、マイナス要素であり、針葉樹全般が、印鑑に適していないということになるのだ。

現在まで、杉を含む多くの針葉樹が印鑑に使用されなかったのは作らなかったのではなく、事実上作れなかったのだ。

図1 智頭杉印鑑のラインアップ http://www.fairwood.jp/img/img_nagaeinsho_02.jpg

品質へのこだわり その2 〜圧密化加工という特殊技術
しかし我々は、残された可能性と「必ずできる」という強い信念を持ち続け、 商品化を諦めなかった。それは、鳥取県産業技術センターの、年輪目(早晩材) の密度差をなくし、比重を高めることのできる「圧密化加工」という特殊技術 に出合ったからだ。この技術の特徴は、高圧水蒸気を用い、薬品を一切用いず 水と熱のみで木材を圧縮形成できる点にある。

鳥取県産業技術センターの協力を仰ぎ、不可能を可能に変える挑戦ともいえる 共同開発が開始した。まず、木工品の製造時に発生する端材板を材料とし、ブ ロック状に加工する。それをステンレス製の治具内にセットし、高圧高温処理 機にて圧密化加工を施す。

圧密化加工とは、高圧高温処理機内で杉ブロックに120℃の蒸気を当てながら プレス加工を行い、再度180℃(10気圧)の飽和水蒸気を当てることによって、 圧縮形状を永久固定することが可能となり、年輪目(早晩材)の密度差を減少さ せ、極めて少なくし、比重の高い圧密ブロックを作成する特殊技術である。 そして圧密化加工によりできたブロックは、材に負担をかけない自然乾燥を基 本とし、その重量変化と含水率を約3〜5ヶ月間に渡り細かく測定し、一定基準 値を満たしたものより、印鑑の形状に加工する。この過程を踏むことで、印面 の堅さ、均質性に関して、緻密な木質で加工性に優れている柘と同等の品質を 得ることが可能となるのだ(注1)

注1 鳥取県産業技術センター、永江印祥堂 営業企画室の調べによる

そして、上記の圧密化加工から乾燥まで、数々の試行錯誤とトライ&エラーを重ね、印鑑の形状加工まで駒を進めることができた。現段階では、木肌が剥き 出しで表面に艶がないためため、表面保護効果とクオリティーの向上を考慮し た艶出し作業の課題が残っているものの、無謀と思われた針葉樹を用いた印鑑 の形状加工は成功した。

弊社の印章の知識と、鳥取県産業技術センターの技術の力が融合し、不可能を 可能に変えることができたのだ。

品質へのこだわり その3 〜人体に無害であること
残された課題である表面保護と艶出し作業、すなわち、品質、外観、そして質 感の全てを考慮した特殊な艶出し作業といえる。我々は、その艶出し作業にも 人体に無害であることを重視し、印鑑に下記の創意工夫を施した。

圧密化加工技術の特徴である「薬品を一切用いず、水と熱のみで圧縮形状を永 久固定出来る」ことを活かし、バフと植物の油より作った人体に無害なワック スにて1本1本丁寧に磨き仕上げを行った。これにより、高級感溢れる褐色と、 杉の持つ優美な木目が際立った趣のある上品な印鑑となった。

材料と品質、この大きく分けた2つのこだわりと、数々の試行錯誤により、ト レーサビリティが明確である国産天然材を100%活かしたエコロジーな印鑑が 完成した(注2)。まさに、時代のニーズに呼び起こされた印鑑の誕生である。

注2 鳥取県産業技術センターとの共同開発(現在、特許出願中)

現在の状況と今後の展開
国産材の利用促進に重点をおいた「県産材の利用促進印鑑」は、昨年12月に東 京ビックサイトで行われたエコプロダクツ2004や、弊社の親会社である三菱鉛 筆の商品展示会等で、各県の官庁関係者やエコに取り組む団体等との情報交換 を行い、非常に高い評価と関心をいただいている。現在、各県よりサンプル作 成の依頼を受けており、各県より持ち込まれた県産の杉に厚密化加工を施した 印鑑サンプルを作成中である。

また、木工品を製造する際に発生する端材を再利用した「木工品端材の再利用 印鑑」は、杉で有名な鳥取県智頭町産の杉の端材を材料としていることから、 名称を「智頭杉(ちづすぎ)」とし、本年1月より永江印祥堂と三菱鉛筆の販売 ルートで全国販売を開始している。

今後の展開として、少しでも早く市場にこの商品を広め、人々の再利用及び、 エコロジ−に対する意識を高めるため、印章メーカーへ「印材」としての供給も 検討中である。

最後に
環境問題全般に通じる問題でもあるが、経済を動かす原動力である「エゴ」と 地球環境に負担をかけない「エコ」のバランスを考慮しないといけない時代で ある。 今回「智頭杉印鑑」が商品化できたのは、特殊技術との出合いもさることなが ら、地球環境の現状を他人事ではなく自分の事と真剣に受け止め、日々できる 事は何かについて追求した賜物であると自負している。今後も、地球環境のた めに「今、我々ができることは何か?」をこれからも追求し、それに伴う新し い商品やシステムを開発し続ける。

> 印鑑用木材についての参考資料(農林水産消費技術センターのHP) http://www.cfqlcs.go.jp/administrative_information/public_relations_magazine/kouhousi/tree_and_life/wl10.htm

(c) 2002 FoE Japan.  All RIghts Reserved.