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第28回フェアウッド研究部会
IKEAの木材デューデリジェンス
~責任ある調達のために
2018年6月20日(水)18:30 @東京・表参道

2018.5.10掲載
2018.8.1更新

開催報告


第28回目のフェアウッド研究部会は、イケア・ジャパン(株)サスティナビリティ・コンプライアンス・リビューワーの佐藤美和子さんを講師にお迎えし、『IKEAの木材デューデリジェンス~責任ある調達のために』と題してお話いただきました。

まずはIKEA社のルーツについて。現在、同社は世界29カ国に355のストアを展開し、従業員149,000人(日本国内では3,000人弱)を擁するグローバル企業ですが、その最初の一歩はドイツからスウェーデンへの移民である創業者が17歳のときに起業した小さな会社からだったそうです。社名の由来は、イングバル(I)、カンプラート(K)、エルムタニット農場(E)、アナグリッド村(A)の頭文字をとってIKEAとのこと。創業時より「資源の無駄遣いはNGである」との想いを経営において貫いてきており、現在でも社内共通の価値観として根付いているそうです。

現在、企業としては国連の持続可能な開発目標(SDGs)をサポートすることに全力を上げていて、全17項目について取組んでいくそうです。この実現するために策定されたのがピープル&プラネットポジティブ戦略、つまりIKEAのサステナビリティ戦略なのだそうです。

その事例の中で、IKEAは資源・エネルギーの自立についても取組んでいるとのこと。欧州のほうでは416基の風力タービンを所有し、75万枚のソーラーパネルを店舗等に設置していて、トータルの投資額は30億ユーロ(約3,900億円)になるそうです。こうした取組みを通して気候変動対策への貢献としています。

次に原料面について。IKEA製品で使用している原料で主要なものはコットンと木材。その原料使用量の面で、IKEAは大きな責任を有していることを自覚し、取組みを進めています。

現在コットンについては100%サステイナブルになっているそうです。外部の協力団体やNGOとともにベターコットンプロジェクトを実施しており、綿花生産地の改善に取組んでいます。取組み前は農薬を大量使用し、散水についても不必要に大量に使用していたところが、灌漑施設の整備や農薬使用量削減が進み、“サステイナブル”を達成するに至っているようです。またIKEA独自のI-WAY基準に基づき、児童労働についても排除していく方針で取組んでいるのだそうです。

木材については「2020年度までに木材、紙、ダンボールで100%サステイナブルにする」という目標があり、達成率は昨年の段階で77%、木材はすでに達成しているそうです。そうした目標によって、商品を開発する段階から「サステナビリティ」が基準になっているとのこと。実際の製品の例をいくつか。イケアはキッチンも販売していますが、キッチンの面材は日本で回収されたペットボトルからの再生材を採用しているそうです。イスについてもすべて再生材を使っていて、それにプラスして組み立てやすさにも配慮しているとのことです。

そしてIKEA Forestryについて。なぜIKEAにとってそれが重要なのか?それは北欧家具は「木材」のイメージがあり、また「アイデンティティ」でもあるから、とのことです。よってその木材は「合法」でなくてはならず、さらに「持続可能」でなければならない、として取組んでいます。

またIKEAには消費者からの要望として「適正な法律を守ったものを使って欲しい」、「リサイクル材を使って欲しい」という60%近い声があるそうです。さらには欧州では、2020年までに木材の供給が不足するであろう、との調査結果が出ていて、欧州域内では木材が足りなくなってきていることを実感しているとのことです。加えて、EUにはEU木材法、米国には改訂レイシー法、豪州には違法伐採禁止法、そして日本にはクリーンウッド法と、違法伐採木材を排除しようとする取組みは拡がっていますが、IKEAの市場の90%くらいはこれらの国でカバーされてしまうことも、取組みの背景にはあるようです。

興味深かったのは、IKEAではBusiness Developerという日本でいうところの営業マンがサプライヤーさんのモニタリングをしているそうです。彼らはサプライヤーさんの新規開拓もするし、サプライヤーさんに環境等に関する取組みについてもサポートしているとのこと。監査を担当するのはForestryの専門家ですが、その監査をパスしないとサプライヤーを変えられてしまい、営業成績が落ちてしまうので、営業マンも真剣にサポートする、という非常に面白い仕組みだと感じました。

その監査で確認することは、(1)合法性、(2)社会的な対立がないこと、(3)保護価値の高い森林(HCV)に由来していないこと、(4)自然林に由来しないもの、(5)遺伝子組み換えでないこと、の5項目で、認証材だと優遇されるそうです。ただしたとえFSC認証を取得している場合でも、現場においてFSCの規定どおりに実施されているかどうかをIKEAはきちんと確認しているそうです。そして認証がない場合はさらに厳しく、IKEAの担当者とともに森までトレーサビリティを確認するのだそうです。この監査は2年に1度、実施するとのこと。

そうした監査業務を通して、IKEAではウッドトレーシングシステムというデータベースを構築しており、監査結果とサプライヤーさんからの情報を一括して管理しているのだそうです。伐採地が変わる/変わった場合などは、サプライヤーさんにも情報を共有して、取組み水準を高めているのだそうです。

お聞きしたお話は、さすがに先進的なグローバル企業で、独自の監査も含めた徹底したサプライチェーンの管理などをとおして、環境や社会に対して企業が果たすべき責任を全うすることに努めている様子が伺えました。

※後日、講師からいただいた情報を以下にご紹介します。
イケア製品に使われている木は、パイン、バーチ、ビーチ、アカシア、スプルースなど。これらは2014年にイケア製品に使用されたトップ5の樹種です。イケア製品に使われる木材の大半はポーランド、リトアニア、スウェーデン、ドイツ、ロシアが原産地です。

(報告:三柴淳一/フェアウッド・パートナーズ、FoE Japan)
家具を中心とする「ホームファニッシング(家庭用の家具や備品)」の小売業のIKEA(イケア)は、スウェーデンを発祥地として世界29か国で350を超える店舗を展開する世界ブランドです。同社では、木材を大量に使う企業として、家具量販店の中では他社に先んじて2012年から、木材調達方針を導入、責任ある木材調達を実践しています。

違法木材などリスクのある木材を自らのサプライチェーンからどのように取り除いているのか、その方法と課題、その取り組みの背景にある同社のサステナビリティについての考え方などをお話しいただきます。

●開催概要
日 時: 2018年6月20日(水)18:30~21:30(開場:18:00)
場 所: 株式会社ワイス・ワイス(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-12-7 2F)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)

プログラム(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「IKEAの木材デューデリジェンス~責任ある調達のために」
佐藤 美和子氏/イケア・ジャパン(株)サスティナビリティコンプライアンスリビューワー

第2部:懇親会

【講師プロフィール】
佐藤 美和子氏(さとう・みわこ)
2014年11月にイケア・ジャパン(株)へ入社。イケア・ジャパンが契約するサービス・プロバイダーやサプライヤーを年間50-60社訪問し、木材調達を含むIWAY(環境と労働条件、児童労働について、イケアがサプライヤーに求める最低限の要求事項を定めたイケアの行動規範)監査を行っています。前職では、製薬会社の本社・工場でのEHS(安全衛生)の管理や環境コンサルタントとしてEHS監査の助手や不動産投資のためのデューデリジェンス報告書の作成、アスベスト調査、土壌汚染調査などフィールドワークに取り組む経験をもつ。


【お申込み】
お申し込みフォームにてお申し込みください。
フォーム記入ができない場合、「第28回フェアウッド研究部会参加希望」と件名に明記の上、1)お名前 2)ふりがな 3)ご所属(組織名及び部署名等)4)Eメールアドレスを、メールにてinfo@fairwood.jpまで送付ください。
※定員50名


【お問合せ】
  • 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
    http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735
  • ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
    http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003

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