ENGLISH | 日本語

第26回フェアウッド研究部会
地域主導の熱利用とフェアウッド~地域の、地域による、地域のための木質バイオマス利用
2018年4月18日(水)18:30 @東京・表参道

2018.3.21掲載
2018.05.30更新

開催報告

第26回フェアウッド研究部会は、一般社団法人徳島地域エネルギーで事務局長を務める豊岡和美さんをお招きし、「地域主導の熱利用とフェアウッド~地域の、地域による、地域のための木質バイオマス利用」というテーマで、バイオマス発電によって生じる熱を近隣施設に利用している事例の分析や、バイオマスボイラーの日本製と外国製の性能についての比較、そしてこれまでバイオマス利用が難しいとされてきた竹のバイオマス利用の可能性などを中心にお話しいただきました。

 

まずは、徳島地域エネルギーが携わってきたバイオマス熱利用の事例として、山梨県のゴルフパーク、徳島県での老人ホームでの紹介がありました。これら二つの施設は、近くにバイオマスの原料となる山林があるために原料調達が容易であること、そしてお風呂用のボイラーの代わりに、バイオマス発電で生じる熱を利用することで、効率性、経済性が両立でき、投資回収がしやすいケースとして説明されました。また、その際のバイオマスボイラーの性能については、全自動式(燃料供給、運転ともに自動)であることが重要ということで、人件費の削減ができるメリットについても触れていました。全国的には、農業でのバイオマス熱利用についての相談が来ることが多いが、農業では加温のタイミングや加温時期が一定期間に限られてしまうことから、設置したとしても投資回収が難しく、設置のメリットが見い出せない現状についても述べられていました。

 

徳島地域エネルギーは、バイオマスボイラー販売をしているオーストリアのETA社の正規代理店業務も行っているということで、豊岡さんは、日本にとどまらず世界各社のバイオマスボイラーについての知識も豊富でした。もともとバイオマス事業を初めた際に、日本製を買おうと探してみたが、高価で性能がイマイチということで海外のボイラー会社に目を向け、そこで高性能で安価であるETA社を発見したそうです。しかし輸入コストなどが高くついてしまうことから、自分たちが正規代理店になってしまおうとの思い切った経緯で代理店業務を始めたということでした。世界各社のボイラーには、全自動で燃焼技術が優秀、しかも安価であるなど、一見すると高性能に見える商品があるそうですが、運転時の消費電力が膨大な場合など、本末転倒なこともあるので気を付けなければならない、との話をされていました。

 

最後に、これまでバイオマス発電とは無縁とされていた、竹のバイオマス熱利用についてホットな話題を提供されていました。本来、竹を燃焼させると、クリンカー(高熱によって半融解状態に固まった鉱物性物質)や窒素酸化物といった物質が発生してしまうこと、また塩素も発生するためボイラーが腐食してしまうという問題点から、竹のバイオマス利用は難しいとされていました。しかしながら、発電効率は落ちますが、燃焼温度を800度以下に抑えて燃焼することで、クリンカーなどの発生はゼロに抑えることが可能だそうです。また、塩素については竹の伐採時期を冬にすると塩素の発生が低減できるということがわかってきたそうで、これから徳島地域エネルギーでは運用に向けて動き出す予定であるとのことです。竹の運用が可能となれば、多くの地域で扱いに困っている竹林を有効に活用できるようになるため、その動向にはとても注目が集まっていることを実感しました。

 

今回のフェアウッド研究部会では、地域発のバイオマス発電が熱利用と合わせることで、効果的な運用が可能であること、また、先進的なオーストリアのETA社の正規代理店を務め、未開の分野であった竹のバイオマス発電による利活用に挑戦する、徳島地域エネルギー豊岡さんのパワフルで、バイオマスの可能性を全国へと発信する心意気が感じられるお話が聞けました。フェアなバイオマス発電の今後の発展に期待です。

 

フェアウッド・パートナーズ/FoEインターン 高田大輔

 

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)によって発電燃料としての需要が急増し、地域での木質バイオマスの利用の形がいびつになる可能性が指摘されています。地域の森林資源を効率的に、持続可能に活用するためには、熱利用やコジェネレーション(熱電併給)がより普及することが不可欠です。

今回のフェアウッド研究部会では、木質バイオマスの熱利用を含めた、地域の再生可能エネルギーのコーディネーションに取り組む徳島地域エネルギーの活動をご紹介いただき、温暖化対策にも地域経済活性化にも貢献する、本来あるべき木質バイオマス利用を地域主導の熱利用という視点から考えます。

●開催概要
日 時: 2018年4月18日(水)18:30~21:30(開場:18:00)
場 所: 株式会社ワイス・ワイス(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-12-7 2F)
会 費: 3,000円(懇親会費1,000円を含む。当日受付でいただきます)

プログラム(内容は予告なく変更することがあります)
第1部:講演「地域主導の熱利用とフェアウッド~地域の、地域による、地域のための木質バイオマス利用」
豊岡和美(とよおか・かずみ)氏/(一社)徳島地域エネルギー事務局長

第2部:懇親会

【講師プロフィール】
豊岡和美氏(とよおか・かずみ)
地元短大卒業後、大手企業に就職。結婚退職後、家業の一級建築士事務所のインテリアコーディネータをする傍ら、市民運動に参画する。平成15年~平成19年徳島県議会議員に就任(1期)。行政への要望提案活動の限界に直面し、みずから再生可能エネルギーで地域を変える運動に取り組むため、徳島県小水力利用推進協議会を結成、県内で小水力発電事業を進める。平成23年徳島再生可能エネルギー協議会を結成し事務局長に就任、再生可能エネルギー全般に取り組む。環境省の地域主導型再生可能エネルギーの地区に選ばれ、平成23年度から平成25年度にかけて、住民主導のメガソーラー事業や収益地域還元型のソーラー事業(コミュニティ・ハッピーソーラー)を推進する。平成25年度からは、一般社団法人徳島地域エネルギーをつくり事業化を支援する。平成26年度からは、木質バイオマスや地域型風力発電にも取り組んでいる。


【お問合せ】
  • 地球・人間環境フォーラム(担当:坂本)
    http://www.fairwood.jp、info@fairwood.jp、TEL:03-5825-9735
  • ワイス・ワイス(担当窓口/広報課 野村)
    http://www.wisewise.com、press@wisewise.com、TEL: 03-5467-7003

【関連情報】

2009 FAIRWOOD PARTNERS All Rights Reserved.