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東京表参道の諸塚村
~くぬぎ、コナラの家具と小物~村の在り方そのままに

製品発表会&フォーラム

「都市と山村の生活を潤す森づくりの薦め」という題で、諸塚村里山広葉樹活用プロジェクトの経緯報告と試作品の発表を、諸塚村で2011年2月19日に行いました。

フォーラムの要旨
中澤開発の第1ラウンドは非常に条件の悪い時期に伐った材で厳しい条件の中での作業でしたが、これからもう少し使い勝手のいい原木をどうやって確保していくか、また量の問題などもあります。これまでの21cm
規格外大径木の出材は年に50立方程度とのことですが、もう少し増やす余地はあるのか、あるいは諸塚の方たちにとって何か無理になってしまうようなことなどはないのでしょうか?

若本:諸塚の企画課、産業課で協議したところ25年生までが490ha、25年以上が2000haというデータがありました。萌芽などもありこのデータを鵜呑みにはできませんが経験上山を回ってみて大きくなり過ぎた山があるというのは事実です。 大径木は搬出しにくい場所に残っています。大径木が半値で取引されているなかで、その山を触るのはきびしい状況でしたが、原木にこう言った新しい価値を見いだせば山主の出材の意欲も湧くと思います。


中澤:大径木でも椎茸の原木と同程度の値段がつけばある程度増やすのは可能であるということだということですね。加工する側から見て、もう少し、こんな原木があればというのが何かありますか?


中村:用材として家具、もしくは建築材に使っていくとなると大径木がほしいです。小さい方が諸塚内では価値があるとすればそこはプラスプラスになります。工業的に木材を使っていくとなると、直材、きずのないものを要求したくなります。それがひいては生産コストにもつながっていくので、何度かやり取りして検証するうちに、品質、コスト面でいい塩梅が見いだせるとおもいます。


中澤:現在は第2ラウンドで、11月に伐採し、トラック1台分、乾燥釜一基分ほど集めていただいたのでコスト的にもいいのではないですか?そのへんの状況をお願いします。


中村:11月に伐採した分は森林組合さんで原木を確認させていただき一番使えるところを選ばせていただきました。割れや条件の悪いものをあらかじめ3割ほど外させていただいて現在10立方乾燥中です。その材は歩留まりも数段いいと思います。木材を扱うにはトラック単位、1釜単位で扱うのがコスト面ではおおきいと思います。


中澤:試作品についてですがナラと言っても今まで使っていた海外のものや北海道の大径のナラとは事情が違うと思いますが、試作品を見ていかがですか?お客さんにアピールできる点などありますか?


佐藤:色のばらけ具合がとてもかわいく、柄もトラの子供みたいだと思います。これがもしロシアのナラを使っていたらこんなまだらではない。あばたもえくぼかもしれませんが要は捉え方です。これを「なんだこのブチブチ」と見るのか、「これは諸塚の子トラちゃんだ」と見るのか。売る側がどういう気持で説明してお客さんに届けるのかです。お客さんがそれを「これかわいいな、大事にしよう」と思って買っていただければそれでいいのです。言い方を変えると個性的な、ほんとうに世界に一つしかない胸を張れる商品だと思います。


中澤:とても前向きなご意見ですが、今までのインテリア業界や家具業界のプロとして見るとどうなんですか?


佐藤:とてもありえません(笑)日本人は白くてきずのないものが好きですね。そこにちょっとでもブチがはいっていたりすると、クレームの対象になり、流通の段階ではねられます。今までの業界の常識では通用しませんが、消費者に対しなにか新しい価値観を作っていくことができれば十分可能性はあると思います。


中澤:小物から見てどうですか?「カタログと色も違うし、節の位置も違う!」なんて指摘されたりしないですか?


桑田:贈り物に使うお客さんだと、5個、10個出して検品するのは当たり前です。そのときに、木目が違うものを並べてそれをどう判断されるかというのはあります。 ただ、百貨店の方と話していると、これまでのように「靴べらですよ、温湿度計ですよ」というのではもう限界があってそこに何かを付け加えるのは知恵のだし所だと思います。伝え方は大事ですが、何か物語を付け加えてあげるとそういうものを望むお客さんはたくさんいると思います。


中澤:これをどのように販売していくかという話に移ります。 これまでの市場経済的な既存の流通の仕組みに流していくのは難しいと思います。大量生産にはなじまないし、作り手の思いや技術を生かして一つ一つ個性がでてくるような製品でもあるし、これまでの画一的な工業製品とはまったく違うものなので、それをどうやって流して伝えていくのかというのはチャレンジし甲斐があると思いますがいかがですか?


桑田:ギフトは道具として使うために買うというより相手に気持を伝える行為のなかに介在しています。もちろん道具としても大事ですが気持を伝えるというところに個性をうまくくっつけていくとこれまでと違う売り方があるのではないかと感じます。


佐藤:ぜひ役場に今後導入する家具は諸塚ものもを使っていただきたいと思います。 今日、皆さんパイプ椅子に座って1時間2時間過ごされていますが諸塚の木でできた椅子で2時間過ごすのとでは今後に全く違う影響があるのではと思います。


若本:特に子供には無垢のもの、地元のものと思いますが、自分たちのような若い家庭にはなかなか手が出せないお値段だとおもうので爺ちゃん、ばあちゃんが孫に買ってあげるような、そのへんにターゲットを絞って開発してみるといいかもしれないと思います。


中澤:最後に諸塚村役場企画課長矢房さん、締めくくりの総括をお願いします。


矢房:この事業は、本来なら産地側から取り組みをお願いすべきものですが、東京から呼び掛けて始まったことに感謝します。 今は、世代間でもギャップが生じるほどの、歴史上類を見ないスピードで、急速な価値観の転換が起きています。この事業の実現のためには、採算性とか、技術面など多くの課題があります。しかし、ものが飽和している時代に、人々が商品の向こう側にあるものを見つめだしたことは、大きな変化の象徴です。

それに答えるために、私たちが何をすべきかが大事です。私が考えるに、新しい価値観は早々生まれるものではありませんが、先人の作った古き良き時代にヒントがあると思います。新しいことばかりを求めるのではなく、守るべきものを守ることを評価する。わたしは革新的保守になります。


山村が東京ばかりを見る時代から、東京が自分たちにないものを山村に求め始めたことは、これまでと大きく違った、これからの新しい時代に大きなインパクトを与えるものです。
ものあまりで行き詰まった大量生産大量消費のシステムでは、使う側の視点にたった顔の見える流通や地産地消は実現できません。それは、一つ一つものづくりをする多品種少量生産なら可能で、それが実現できる可能性があるのは、中小企業やそこで働く技能者、兼業農家などのいる地方の農山村です。

このシステムは、大きなスケールではとても非効率ですが、小さな社会ではとても融通が利いて暮らしやすいものになります。だから誰かが大儲けをすることはできませんが、協力し合ってみんなでやっていくことはできるはずです。このことは、意識しているかどうかは別にして、すでに東京の人たちは気づいている。これに地方のみんなにもわかってほしい。


今の激動の時代に、みんな自分を守るのに精いっぱいですが、自分のことだけ考えることをやめ、みんなで取り組めば、簡単なのではないでしょうか。 ものを扱うとき、材料の向こう側にある生産者の顔を感じてほしい。 明日から、森を守ること、生活を守ること、技術を守ることなどを、みんなで取り組んでいけないでしょうか。ぜひ諸塚に来た方たちから価値観をかえていきましょう。

このプロジェクトに関してはこれからどうなるかわかりませんが、家具に触れた時、その木を育てた人、この木で椎茸をつくろうとした人たちがいるというのを感じてもらえるようなものができ、それを感じられる人たちがいっぱい増えることが私の願いです。




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