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クリーンウッド・ナビの課題

「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(通称「クリーンウッド法」)では、木材関連事業者が行う合法性確認の際に参考とする情報が、国によって提供されることになっています(クリーンウッド法第4条2項「法令等情報」)。同法が推進する合法木材の普及促進と違法伐採木材の日本市場からの排除に実効性を持つためには、この法令等情報の内容が重要であることは言うまでもありません。

林野庁が法令等情報を提供するために立ち上げたウェブサイト「クリーンウッド・ナビ」の掲載内容について、現時点で課題と考えられる点を以下に紹介します。

なお私たちは、ナビの掲載情報の内容や普及のあり方については、NGOを含む多様な関係者による協議にもとづいて検討されていくべきだと考えています。

1)合法性の確認におけるガイドラインの活用について
ナビでは、グリーン購入法に基づく「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(ガイドライン)の活用が随所に書かれています。しかし、ナビの「木材等の合法性の確認方法」においても書かれているとおり、第一種木材関連事業者と第二種木材関連事業者とでは確認内容が大きく異なります。

第一種木材関連事業者では、「イ.自ら所有する樹木を材料とする丸太についての次の事項を記載した書類(種類及び原材料となっている樹木の樹種、原材料となっている樹木が伐採された国又は地域、重量、面積、体積又は数量)、ロ.イの樹木が我が国の法令に適合して伐採されたことを証明する書類を確認する」こととなっており[1]、ガイドラインの活用のみでは、法が求める合法性確認には不十分です。

その点において、「本サイトの目的等」の記述についても、注意が必要です。クリーンウッド法のパブリックコメントの結果として公表されている「御意見の概要及び検討結果」においては、繰り返し「ガイドラインでは合法性の証明を行った結果の伝達方法については示されているが、合法性の証明のために必要な確認の具体的な方法については示されていない」「ガイドラインに基づく合法性の証明のみをもって法に基づく合法性の確認を行ったことにはならない」「合法証明書類がなかったとしても、更なる情報の収集により合法性の確認ができる」との記述があります。しかし、現在クリーンウッド・ナビに掲載されている「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律に係るQ&A」には、ガイドラインの活用の限界については掲載されていません。この点は、事業者がどのように合法性確認を行うか検討する上で極めて重要な情報であり、事業者が誤解をしないためにも、忠実な内容を掲載すべきと考えられます。

2)合法性確認の手順について
情報収集(リスク把握)、リスク評価、リスク緩和措置、の3段階からなる合法性確認(木材DD)のステップの解説を追加する必要があります。リスクベース・アプローチについては、これまで日本の事業者が取ってきた方法と大きく異なるため、理解を深めるためには繰り返しわかりやすく解説する必要があります。

特にリスクが高い場合、合法性の確認方法が従来の合法証明書類だけで不十分であることの説明が必要です。クリーンウッド法がこれまでのガイドラインと異なるのは、合法証明のみに依らない合法性確認を求めている点なので、そのことが明確に伝わることが重要と言えます。

3)国別情報
国別情報の「合法性確認書類の事例」にガイドラインで認められていた事例が掲載されています。しかし、1)で述べたとおりパブコメの検討結果に示された「ガイドラインに基づく合法性の証明のみをもって法に基づく合法性の確認を行ったことにはならない」という見解と矛盾しているので注意が必要です。

また以下の情報については、事実と異なると思われる情報が掲載されているため確認が必要です。

ロシア(極東)
地域法12-ZKO:森林関係の領域における州政府間の全権区分について(2011年)
これはクルスク州の法律で極東とは無関係であるため、掲載は不適切です。
http://www.fao.org/faolex/results/details/en/?details=LEX-FAOC126061

パプアニューギニア
合法性確認書類の事例として掲載されている以下は、合法性確認書類ではないため、掲載は不適切です。
SGS木材検査報告書(Log Inspection Report)

ソロモン諸島
合法性確認書類の事例として掲載されている以下は、合法性確認書類ではないため、掲載は不適切です。
原産地証明書(CERTIFICATE OF ORIGIN)

    [1]第一種事業は2つに分かれているが、ここでは樹木の所有者から譲り受け等をする事業の場合を記載



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