※グローバルネット2006年8月号(189号) 特集/食の持続可能性〜持続可能性調達連続セミナーより
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図1 ブラジルの土地利用状況(1990年代前半)
(作成:ポンプワークショップ) |
世界から注目を浴びるバイオ燃料大国ブラジル
日本では地球温暖化対策に向けてバイオ燃料導入政策が進められ、ブラジルからのアルコール輸入に向けた取り組みが進められている。
ブラジルは、1次エネルギーバランスにおいて、バイオマス、さとうきびアルコール、水力発電の再生可能エネルギー利用が全体の42%を占めており、再生可能エネルギー活用・バイオマス先進国といえる。とくに注目を浴びているアルコールは、全体の14%を占め、交通輸送部門においても11%を占めている。この背景には石油ショック以降進められてきた燃料用アルコール利用推進政策の影響が大きい。現在も、新車販売台数の70%がアルコール、ガソリンの両方の燃料が利用可能なフレックス燃料車であり、トヨタもフレックス車導入を決定している。
ブラジル政府はこうした政策の経験を生かし、さらに総合的なバイオ燃料利用を牽引していくため、2005年に農務省、科学技術省、鉱山エネルギー省、通商産業省の連携により、さとうきびアルコールおよび木質バイオマス、バイオディーゼルを中心としたバイオ燃料を2004年の石油換算5,700万トンから2020年には1億2,400万トンへと倍増させるアグロエネルギー政策指針を示した。
さとうきび増産のもくろみ
計画では、さとうきびは今後2倍近くの収穫が必要とされ、作付面積も倍増が求められている。ブラジルにおける土地利用状況(図1)では、2004年次におけるさとうきび作付面積は560万haであり、牧草地を除く全農地の1割にも満たないことから、5,000万haは拡大可能という意見も存在する。政府は、とくに心配されるアマゾン森林破壊等の問題について、さとうきびの主要生産地はサンパウロ州を中心とした南東部および北東部であり、アマゾン地域に影響を与えるものではないとの見解を示している。
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図2 アマゾン森林減少面積と主要産業の動向
(作成:ポンプワークショップ) |
セラードからアマゾンへと拡大した大豆生産
しかし、さとうきび増産を進めるに当たっては、急速にセラード(ブラジル・サバンナ地帯)からアマゾン地域へと拡大した大豆生産を教訓とすべき点も多い。
1960年代より始められたセラード開発によって、現在、大豆は主要輸出産品となり、今やブラジルは世界1、2を争う大豆生産・輸出国である。その経済効果・社会的便益は大きく、生産面からは大成功であった。しかしながら、セラードは開発前に認識されていたような見捨てられた価値のない草地ではなく、多様な鳥類をはじめとする複雑かつ多様な生態系を有する地域である。この貴重な自然植生が面積において半分以上も破壊され、現在は生物多様性の危機に瀕するホットスポットにも指定されている。そして、大豆栽培はセラードを利用し尽くし、品種改良の恩恵も受け、現在ではアマゾン森林破壊の大きな要因の一つとなっている(図2)。
森林破壊を推し進める土地需要増大
政府のガイドラインでは、伝統的なサンパウロを中心とした南東部のみならず、中西部やトカンチンス州、ピアウイ州がさとうきび生産候補地として挙げられており、セラードのみならずセラードとアマゾンの移行帯地域をも含む可能性は大きい。かつての大豆生産が牧場跡地を利用したように、現在のさとうきび生産地拡大計画も未利用地や放棄地を有効に活用することで森林破壊への開発圧力を減少させると強調されているが、実際には大豆栽培進出が地価高騰への期待等の開発圧力を生じ、不法開拓民、違法伐採業者、牧場主による森林伐採を押し進める要因となった。さとうきび生産そのものが森林地域を利用することはなくとも、アマゾン森林が適正に管理されない現状では、土地需要増大は森林開発の圧力となりうる。森林を破壊し、農地拡大を進めてきたブラジルの歴史は今もなお続いている(図3)。
さとうきびの加工や流通は、当然のことながら大豆とは異なっており、加工産業および物流面での制約も大きく、同様のシナリオとはならないであろう。しかしながら、大豆拡大が経験したように経済部門による開発の動向は、資源の持続的利用や森林保全の制度化よりも著しく速く、森林開発のコントロールを困難にさせるのが現実である。
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図3 現在も続くブラジルの森林破壊と農業開拓の歴史
(作成:ポンプワークショップ) |
適正なバイオ燃料の利用に向けて
バイオ燃料はさとうきびアルコールのみではない。とうもろこしも大豆も利用可能である。採算性・効率性の問題は存在するが、ブラジルでは大豆ととうもろこしの二毛作は、一般的な組み合わせであり、どちらも燃料としての利用もありうる。また、ブラジル国内では、ディーゼルへのバイオディーゼルの混合義務づけが決定しており、北東部を中心にバイオディーゼル原料となるトウゴマ、オイルパームにも期待がかけられている。いずれにしても大豆拡大と同様に環境社会面の影響を考慮する必要はある。しかし、原料の多様化はバイオ燃料特有の季節変動、気象環境による生産量増減のリスク対策にもなり、地域分散型エネルギーかつ国内自給に結びつき地域発展にも貢献しうる。実際にコミュニティレベルでのバイオディーゼル利用事業も存在する。
バイオ燃料は善悪あわせ持つものである。重要な点は、過去の経験から学び、環境社会面での負の影響をコントロールし、適正かつ持続的なバイオ燃料の活用を可能としうる制度を構築していくことである。
>NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
http://www.npobin.net/ |