フェアウッドマガジン
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第2号
 
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フェアウッドマガジン 第2号 INDEX
1. ロシア森林劣化加速の恐れを孕む中ロ木材貿易の拡大
森林大国ロシアで、熱帯林とは異なったパターンの森林破壊が進んでいることは意外に知られていない。大規模森林火災の頻発に粗放な商業伐採が加わって、人手の入らない成熟林(天然林)が若い森林に置き換わる質的劣化が進んでいるのだ。この商業伐採の加速要因として注目を集めているのが中国向け木材輸出の急速な拡大である。
(神奈川県自然環境保全センター研究部 山根 正伸 氏)
2. インドネシアの違法伐採と日本の木材貿易
  日本の主要な木材貿易相手国のひとつであるインドネシアは現在、伐採の持続可能性や先住民族の権利といった重要な問題とは別に、違法伐採という大きな問題に頭を抱えている。インドネシアは1980年代から1990年代にかけて合板産業や紙パルプ産業の育成に成功し、木材産業が大きく成長した。その一方で、こうした木材産業による大量の木材需要が生まれたことにより、伐採計画に違反した管理されていない森林伐採や、伐採権のないグループによる違法な伐採が横行するようになった。
(熱帯林行動ネットワーク 小浜 崇宏 氏)
3. グリーン購入で違法伐採材を排除できるか (第2回 海外のグリーン購入の取組から)
  前回は日本のグリーン購入法の動きと木材について紹介した。今回は海外におけるグリーン購入の動向について、EUとイギリスの取り組みを中心に紹介したい。
(グリーン購入ネットワーク事務局長 佐藤 博之 氏)
4. 違法伐採対策をめぐる最近の国際的な動き
7月9-10日、「アジア森林パートナーシップ(AFP)」の第2回目の実施促進会合が開催されました。これに先立つ6月24日、日本とインドネシアで違法伐採対策のための共同発表とアクションプランが署名されました。ヨーロッパでは、5月21日に欧州委員会が行動計画を発表しました。ここでは、これら違法伐採問題に関する最近の国際的な動きについての報告をいたします。
(フェアウッドキャンペーン事務局)
5.世界のニュース
* 官僚制度と貧困がペルーの違法伐採を招いている
* 日インドネシア違法伐採対策で共同発表・アクションプラン署名
* マレーシアの違法伐採対策
* 欧州委員会が違法伐採対策の行動計画を採択
* マレーシア、シンガポールでロンダリングされるインドネシア産違法木材
 
訂正のお知らせ
5月に配信の第1号の内容に一部誤りがありましたので以下の通り訂正いたします。

『1. 熱帯林の20年と日本の緑の消費者の実力』(藤原敬氏著)

誤「・・・92年にはオーストラリアが熱帯木材製品に対するラベル義務づけという立法措置を執る・・・」
正「・・・92年にはオーストリアが熱帯木材製品に対するラベル義務づけという立法措置を執る・・・」
 
1.ロシア森林劣化加速の恐れを孕む中ロ木材貿易の拡大
 
神奈川県自然環境保全センター研究部 山根 正伸 氏
1.はじめに
森林大国ロシアで、熱帯林とは異なったパターンの森林破壊が進んでいることは意外に知られていない。大規模森林火災の頻発に粗放な商業伐採が加わって、人手の入らない成熟林(天然林)が若い森林に置き換わる質的劣化が進んでいるのだ。この商業伐採の加速要因として注目を集めているのが中国向け木材輸出の急速な拡大である。

中国のロシア材輸入量は、1996年以降、毎年平均40%以上の伸びで急速に拡大してきた(図1)。2002年の輸入量は1,481万m3に達し、日本の輸入量の3倍以上になった。2003年は2千万m3に及ぶ勢いで推移している。
図1 ロシア材輸入の推移(1992〜2002)
図1 ロシア材輸入の推移(1992〜2002)
本稿では、このような中国でのロシア材輸入急増の背景と実態を最近話題となっている違法材問題も含めて手短に紹介し、ロシア材の持続的木材貿易を考えてみたい。
2.ロシア材輸入急増の背景
中国は、国民一人あたりの木材消費量が約0.1m3と日本や米国と比べてまだかなり少ないが、13億人近い人口の年間木材消費量は1億4千万m3を越え、世界有数の木材消費国である。産業用途の原木は、国内の天然林から大半が調達されてきたが、このところ輸入への依存度を高めている。とくに1996年以降に伸びが急激で、2001年の輸入量は過去最高水準(1,686万m3)を更新し、2002年には2,433万m3にまで達して、世界の木材市場に大きな影響を及ぼすようになっている。

このような急増の原因は需給両面がある。需要面では生活水準向上による住宅建設の拡大、西部巨大開発や北京オリンピックといった国家プロジェクトによる建設用木材の需要増加である。供給面では、過伐や大規模な森林火災による木材供給能力の大幅な低下がある。また、「天然林保護プログラム」と呼ばれる森林保護政策が1998年に始まり、天然林地帯で伐採禁止や伐採量削減が厳しく実施されたことが、天然林材の供給低下に拍車をかけているのだ。中国政府は、木材需給バランスのため植林や代替材利用などの対策も進めているが、短期的には木材輸入拡大が主力で、原木の関税撤廃や国境貿易拡大政策などを順次打ち出してきた。
3.中ロ原木輸入の実態
ロシア産原木の輸入量シェアは2002年には6割を超えており、アカマツやカラマツなどの針葉樹、タモやナラなど広葉樹の輸入材のほとんどがロシア産である。

これらは東シベリアや極東地域で生産され、大半が丸太のまま貨車あるいはトラックにより国境を越えて中国へ輸出される。黒龍江省の綏芬河、内蒙古自治区の満州里、エレンホトが3大国境通過地点である。最も通関量が多い綏芬河は、豊かな森タイガを擁する極東南部地方と接している地理的関係から、広葉樹材の取扱量が際だって多い。また、アムール川(黒龍江)やウスリー川をはさんで国境が長い黒龍江省には10箇所以上の中小通関地点があり、少量だが輸入量は近年急速に伸びている。

輸入材は通関地点で一旦ストックされ業者が買い付け、北京などの大都市や木材加工工場が多い沿岸地域に輸送後、建築用材やパネル、家具、床材など内装品に加工されている。中国製ロシア材製品の欧米や日本向けの輸出量は少なくない。木材市場は、計画経済廃止後日が浅いため未発達で、ロシア材や製品の流通実態は不明な部分が多い。
図2 ロシア国境通過駅から中国に輸出されるロシア材
図2 ロシア国境通過駅から
中国に輸出されるロシア材
(沿海州グロデコボ駅、
1999年6月撮影)
4.違法材の輸入問題
ロシアでの木材の違法な伐採や輸送・輸出の横行は、ロシア側のほとんどの関係者が認めている。しかし、その内容は、盗伐から伐採規則違反、税金逃れ、輸送許可書の偽造など多様で、割合も1%から数十%まで調査主体や地域で大きく異なった推定値がある。中国が輸入するロシア材にも、相当量の違法材が含まれており、中国国内で不足し高値のタモやナラ、チョウセイゴヨウマツは、中ロ両国の闇社会も関わって組織的な違法伐採・輸出が疑われている。これら樹種は、ロシアでは資源減少が進み森林の質的劣化を招くとして伐採が制限・禁止されている。

中ロ両国政府は、政府間会合や国際会合などで問題対処を表明している。しかし、ロシアでは森林管理機構の弱体化や汚職・腐敗の蔓延などの構造的問題、不足する木材の代替としてロシア材が欠かせない中国側の事情があり、4千kmに及ぶ中ロ国境、中国企業のロシアでの活動活発化、零細な事業体中心の取引など多様な要因も加わって、解決にはまだ時間がかかりそうだ。ロシア政府や森林管理当局、民間の林産企業や輸入業者、環境NGOがロシア材の素性を洗う取り組みを始めたが、その効果はまだ限定的である。
5.おわりに

国際社会は、ロシア木材資源の持続的利用に加えて、広大な森林の果たす炭素吸収源としての役割や、生物多様性保全に強い関心を寄せており、ロシア材の持続的貿易の実現への具体的行動を、関係各国に強く求めている。日本も、中国製ロシア材加工製品の主要輸入国として、またロシア材の輸入大国として、関係各国と協調した積極的取り組みが必要である。

 
2.インドネシアの違法伐採と日本の木材貿易
熱帯林行動ネットワーク(JATAN) 小浜 崇宏 氏
日本の主要な木材貿易相手国のひとつであるインドネシアは現在、伐採の持続可能性や先住民族の権利といった重要な問題とは別に、違法伐採という大きな問題に頭を抱えている。インドネシアは1980年代から1990年代にかけて合板産業や紙パルプ産業の育成に成功し、木材産業が大きく成長した。その一方で、こうした木材産業による大量の木材需要が生まれたことにより、伐採計画に違反した管理されていない森林伐採や、伐採権のないグループによる違法な伐採が横行するようになった。

現在のインドネシア国内の木材加工産業の木材消費量は、最も少ない推測でも6300万立方メートルとされているが、2002年に発給された伐採権に基づく木材生産量は1200万立方メートルでしかなかった。
図3 森林保護区にもかかわらず違法に伐採されてしまう
図3 森林保護区にもかかわらず
違法に伐採されてしまう
実に、木材需要の約8割が合法でない供給源からのものであったことになる。さらに、今年の伐採権発給量は689万立方メートルと発表されていることから、その状況はさらに悪化するものと思われる。

違法な伐採の形態は様々である。伐採権所有者によるものは、当局に提出した計画伐採量を超えた伐採や、小径木や認可地域外の伐採があげられる。伐採権のないグループによるものについては、地域の有力な実業家や軍などが地域の住民や他の地域からの移民・出稼ぎ労働者を大規模に組織して行っているものや、隣国マレーシアの資本家が関わっている事例が多々報告されている。国立公園などの保護区も例外でなく、違法伐採が行われていない国立公園は1つだけであるとも言われている。こうした森林破壊によって、5000万人とも言われる森林に依存している人々の生活が影響を受けているだけでなく、森林破壊が原因の洪水も多発し、多数の死者を出すなどの大きな被害が発生している。

違法伐採は、主にラミン、ウリン、ケンパス、メランティなどの高値で売れる樹種が対象となっている。特に、ラミンは伐採により急激に減少し、現在では国立公園以外ではほとんど見られなくなったことから、2001年にワシントン条約に登録され、その貿易が禁止されることになった。
違法に伐採された木材は、国内の加工工場に供給されるもののほか、隣国のマレーシアや中国などへ違法に輸出されるものもあり、違法な木材貿易の量は1000万立方メートルとも推測されている。マレーシアのサバとサラワクの木材加工産業はインドネシアの原木に大きく依存していると推測されており、マレーシアからはさらに、中国、日本、台湾、香港などに輸出されていることが明らかになっている。

違法伐採の原因としては、政府職員による汚職や軍や警察による関与のほか、持続可能な生産量をはるかに超えた木材産業の過大な木材需要があげられている。専門家の間では、違法伐採の解決のためには、伐採現場よりも木材需要側(インドネシア国内加工産業、海外需要を含む)における対策の方が重要であるという意見で一致している。
図4 マレーシア向けに違法伐採された木材を積み込んでいる現場
図4 マレーシア向けに違法伐採
された木材を積み込んでいる現場
インドネシアの主要な木材製品である合板は、その約4割が日本に輸出されていることを考えれば、消費国としての日本もインドネシアの違法伐採問題に大きく関わっていると言える。インドネシア国内からも、「輸入国やユーザー企業も犯罪のパートナーである」といった声が聞かれる。

近年、欧米では、原生林(オールドグロス林)から産出された木材や紙の使用を停止し、FSC(森林管理協議会)などの認証木材を利用する企業が急速に増加しており、フォーチューン1000に選ばれている企業のうち、すでに50社以上がこうした取り組みを行うことを発表している。一例として、アメリカ国内最大のホームセンターであるホームデポ社は、今年1月に配布した報告書の中で、取り扱っている8900種類の木材製品の原料供給源を把握し、インドネシア産木材の仕入れを70%削減したと報告した。現地の状況を考慮して、インドネシア材の取り扱いを停止する企業も出てきている。

インドネシアの違法伐採をはじめとした世界の森林問題の解決のためには、実質的な世界最大の木材輸入国である日本の取り組みが欠かせない。日本では熱帯材は、住宅の下地材や造作材、ビルなどの建設時に使われるコンクリート型枠、家具などに用いられているほか、ホームセンターなどでもラワン材などとして販売されている。熱帯林行動ネットワークでは、政府が違法材と判明したものに対して輸入規制を行うことや、木材の各ユーザーが取り扱っている製品の原料の供給源を調査することによって違法材や原生林材の利用を段階的に停止し、信頼できる制度によって認証された木材や、製材残材・廃材などを利用した製品の利用を進める取り組みを提言している。
JATAN 違法材・原生林材不使用キャンペーンWEBサイト http://www.jca.apc.org/jatan/
 
3.グリーン購入で違法伐採材を排除できるか (第2回 海外のグリーン購入の取組から)
 
グリーン購入ネットワーク(GPN)事務局長 佐藤 博之 氏

前回は日本のグリーン購入法の動きと木材について紹介した。今回は海外におけるグリーン購入の動向について、EUとイギリスの取り組みを中心に紹介したい。

EUのグリーン購入に関する通達
欧州では90年代から政府や地方自治体でグリーン購入の取り組みが見られるようになってきた。特に、デンマーク、スウェーデン、オーストリア、オランダなどで取り組みが盛んである。

一方、欧州では市場統合が進み、経済政策も共通化が図られてきた。環境政策についても同様で、各国の環境政策をできるだけ共通化し、不必要な貿易障壁にならないようにとの方向で進んでいる。

グリーン購入については、EUの公共調達指令でどこまで環境配慮が可能なのかが明らかにされていなかったため、各国の行政機関がグリーン購入推進をためらう要因となっていた。そこで、欧州委員会(EC)は2001年7月、公共調達におけるグリーン購入の可能性を示す通達(Interpretative Communication)を発表した。通達では、現行の公共調達指令のもとでもかなり自由にグリーン購入を推進することが可能であるという判断を示した。

この通達によると、行政機関は入札の仕様書において、特定の材料を指定することや、特定の材料を使ってないことを定めても構わない。例えば、「木製枠の窓」「再生材使用」などと指定することができる。さらに注目すべきなのが、「製造工程に関わる要求事項を盛り込んでも良い」とする判断である。具体的には、「持続可能な森林の木材から作られた家具」「オーガニック食品」「グリーン電力で製造された製品」など、最終製品の特徴に関係しない事項も含めることができる。

従来からの「環境と貿易」に関する議論では、「最終製品に関係しない製造プロセス」については環境ラベルの基準や規制に含めるべきではない、とする意見が強かった。これは、製造プロセスに関することは所在する地域の政府が決めるべきことであり、環境や経済状況が異なる国にも同じ基準を押し付けることは貿易障壁になる可能性がある、ということであった。しかし、地球規模での環境保全への関心が高まる中、最終消費者として資源採取や製造工程まで含めた環境影響を考慮すべきである、環境を破壊しない方法で作られた製品が買いたい、という声が大きくなっている。ECの通達はこれを反映して一歩踏み込んだ判断を示したものと言える。この判断は、出所が明らかで持続可能な森林から切り出された木材の利用を推進することにつながるだろう。

また、この通達ではエコラベルやFSCのような環境ラベルについて、環境ラベルの認定基準をそのまま援用することは可能だが、「環境ラベルの認定を絶対条件にしてはならない」という従来通りの判断を示している。すなわち、認定を受けていなくても別の方法で基準に適合していることを示せれば、その製品も排除してはならないということである。この判断については、環境関係者の間から不満の声が出ており、環境ラベルの認定・取得を条件にすることが認められるべきだと主張している。

このように、EC通達については不十分で不明確な部分も残っているという声はあるものの、グリーン購入を進めやすくなったことは確かである。

現在、EUの法律ともいえる公共調達指令の改定作業が進んでおり、上記EC通達よりも踏み込んだ内容にできるのか、それとも後退してしまうのか、関係者を巻き込んで大きな議論となっている。


参考:EUのグリーン購入に関する通達
http://europa.eu.int/comm/environment/gpp/
イギリスの「GreenからSustainableへ」の動き

イギリスでは環境保護庁(EPA)が自らの事業の環境影響評価を行ったところ、最も重要な環境影響領域の一つが調達であることがわかった。そしてサプライチェーンにおける環境的及び倫理的な信頼性の問題があることがわかった。そこで、EPAでは環境側面だけでなく、持続可能性、倫理性などを含めた持続可能な調達「Sustainable Procurement」の導入を進めている。国際的に見ても倫理性を含めた調達の研究や実践はあまり行われていないが、EPAではまずは簡単なところから取組をスタートすることが重要だと考えている。

EPAではまず主要なサプライヤー500社に関して、環境方針、環境影響評価、目標設定、情報公開、環境管理システム、海外事業所と調達先のマネジメント、労働環境、最低労働者年齢、平等性、賃金支払など環境面と社会面の両方についてベンチマーク評価を行った。そして、その結果をフィードバックするとともに環境問題や企業の社会的責任(CSR)をカバーするCD研修パッケージを500社に提供した。取引先トップ20社についてはさらに詳細な調査を行うとともに、一緒に行動計画を策定して継続的な取り組みを促している。

EPAでは現在、産官で活用することを狙って6億円を投入して各種製品ガイドを構築する計画である。既に各国にある基準やガイドラインをもとに作成する予定であるが、木材については他国にも例がないので、"持続可能な森林"の観点から独自に策定することにしている。

また、政府は産業界やNGOを入れた「持続的調達グループ」を立ち上げ、国の政府機関が購入する製品のミニマム基準案を作成している。例えば、自動車についてはCO2の排出量、木材は持続可能な森林から採られたものであること、などが検討されており、この基準は首相の承認を経て義務化される予定である。

グリーン購入ネットワークWEBサイト http://www.gpn.jp
 
4.違法伐採対策をめぐる最近の国際的な動き
 
フェアウッドキャンペーン事務局
2000年のG8九州沖縄サミットで違法伐採問題が議題として話し合われて以来、この問題は、持続可能な森林経営の推進にとって大きな障害との認識が国際社会で高まってきました。とりわけ、法の執行体制が弱く行政機構に問題のあるインドネシアでは、7割もの木材が違法伐採との報告もされており、これらの木材が大量に国際市場に流れ込んでいることから、国際間での取組みが求められるようになっています。

7月9-10日、インドネシア・ジョグジャカルタで日本とインドネシア政府が主導してつくられた「アジア森林パートナーシップ(AFP)」の第2回目の実施促進会合が開催されました。違法伐採をはじめ、森林火災、森林再生に多様なステークホルダーが共同して取組んでいこうと言う趣旨の枠組みです。

これに先立つ6月24日、インドネシアのメガワティ大統領の来日に合わせ、インドネシアにおける違法伐採問題に対して両国間で協力して対策を行うとの「共同発表」と、「アクションプラン」(行動計画)が署名されました。

また、ヨーロッパにおいても、5月21日に欧州委員会が、増加する違法伐採と違法取引に対処するため、森林法の執行、ガバナンス及び貿易(FLEGT)に関する行動計画を発表しました。

ここでは、これら違法伐採問題に関する最近の国際的な動きについての報告をいたします。
アジアフォレストパートナーシップ第2回実施促進会合
昨年のヨハネスブルグサミットで、日本とインドネシア政府が主導する「アジア森林パートナーシップ(AFP)」が立ち上げられました。アジアの森林劣化を止めようと、政府のみならず民間や市民社会も交えて森林問題に取組んでいこうと言うものです。昨年11月東京での第一回の実施促進会合が行われ、違法伐採、森林火災、荒廃地植林がAFPで取組む課題として合意されました。そして、去る7月9-10日にインドネシア・ジョグジャカルタで第二回目の実施促進会合が開催されました。

120名ほどが参加して行われた今回の会議には、地元インドネシアの有力なNGOも少数ながら参加(オブザーバー参加)しており、AFPに対する期待も窺えました。しかし、AFPがどこに向かってどのように動き出すのかが見えないままに開催された今回の会合では、様々な立場の利害関係者による対等なパートナーシップの重要性については認識されましたが、2日間を通してAFPの意義や優位性についての議論に時間が割かれました。リーディングパートナー側(*)としては、あくまでファシリテーターであるということから、参加パートナーからの自主的な提案によるボトムアップのアクションを求めていましたが、各国政府からの明確なコミットメントが見えず、具体的な目標やリーダーシップの不在、運営手法の未定、資金的な裏付けが無いなどの理由から、具体的な取組みを決めるまでには至りませんでした。次回会合(11月日本)でどこまで具体的な目標が示せるかがこのプロセスの重要なポイントとなるでしょう。

※リーディングパートナーは、日・イ両政府、CIFOR(国際林業研究センター)、WRI(世界資源研究所)、TNC(ザ・ネイチャー・コンサーバンシー)
日本−インドネシア間で違法伐採対策の行動計画を締結
AFPでは、多様な国の様々な利害関係者が関わっているために、コンセンサスを得るまでにまだ時間がかかるでしょう。まずは、2国間での取組みを進めることが重要です。

2001年9月のFLEG東アジア会合(森林法の施行とガバナンスに関する東アジア閣僚会合)では輸出国・輸入国双方が違法伐採に取組むことを合意し、このためには2国間及び多国間の協議、協力が必要との宣言が発表されました。これを受けて2002年には、インドネシアに対する2国間の協定が続々と結ばれるようになり、イギリス、ノルウェー、中国との間でそれぞれ協定が結ばれました。日本政府も、G8サミット以来この問題に積極的に取組む姿勢を見せており、この6月24日、同国との間で共同発表および行動計画を結ぶに至りました。

日本-インドネシア間の行動計画の中では、生産国での合法性証明・木材追跡システムを作ることが中心となっていますが、消費国側でもできるところから対応を進めるべきです。あらゆる方途を使って、違法木材の国内市場への流入を阻止すると言う断固とした政策が求められます。消費国側からのプレッシャーは、第3国を経由した違法木材製品や、他の生産国からの違法木材に対しても有効な方策となるでしょう。
欧州の行動計画
このような消費国側での包括的な対応も含めた行動計画が、さる5月21日に欧州委員会から発表されました。これは、「森林法の執行、ガバナンス及び貿易(FLEGT)のための行動計画」と呼ばれ、2001年9月のFLEG東アジア閣僚会議を受けて欧州委員会で準備を進めていたものです。行動計画を作るために、2002年4月には、ブリュッセルでワークショップが開かれ、EU加盟国のみならず、他の木材生産国・消費国政府や、業界、NGOも参加して議論がされました。

この行動計画には、生産国における合法性証明システムの開発支援、ガバナンスの改善やキャパシティビルディングとともに、これを補完する形で違法材への需要を削減するための消費国側(EU内)での対策も盛り込まれています。

パートナーとなる生産国で輸出が許可された木材しかEU内に流通させないと言う自主的なライセンススキームや、多国間協議での進展が無い中でも取り組みを進められるよう、EU市場への違法木材製品の輸入を制限するための法規制を検討することが記載されています。また、政府調達においての指針や、業界に対する自主的行動規範の導入促進、金融機関が違法伐採活動を助長するような投融資を行わないための手段なども記載されています。
日・イの行動計画もEUの行動計画も大きな前進です。違法伐採問題は問題を議論する段階から対策を実行していく段階に移ってきました。とはいえ、これらの行動計画はまだ作られたばかりで、これからどのように実行されていくか、注意深く見守りたいものです。

※参考

アジア森林パートナーシップ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/15/rls_0714a.html

日・イ共同発表/行動計画
http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h15-6gatu/0624sign.htm

EU-FLEGT行動計画
http://europa.eu.int/rapid/start/cgi/guesten.ksh?p_action.gettxt
=gt&doc=IP/03/718|0|RAPID&lg=EN&display=


http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/cnc/2003/com2003_0251en01.pdf
 
ニュース記事リンク
2003/07/07  ITTO:官僚制度と貧困がペルーの違法伐採を招いている
ペルーにおける違法伐採の問題と対策が提案されているITTOのレポート。ペルーで新しく制定された森林法は違法伐採を減少させる重要なステップであるが、効果的に実行するためには強力な追加的施策が必要である。
http://www.itto.or.jp/inside/current_news/July07_2003.html
2003/06/24  林野庁:日インドネシア違法伐採対策で共同発表・アクションプラン署名
日本とインドネシアの担当大臣が、違法伐採対策協力についての「共同発表」とその「アクションプラン」を署名した。「アクションプラン」とはインドネシアでの(1)合法伐採木材の確認・追跡システムの開発(2)市民社会も参加した上での同システムのモニタリング・伐採監視(3)違法伐採木材の流通・貿易からの排除方策の研究、を両国が協力して計画的に進めるためのもので、また「共同発表」はアクションプランの概要や違法伐採対策協力についての理念を盛り込んだものとなっている。
http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h15-6gatu/0624sign.htm
2003/06/10  Asian Times:マレーシアの違法伐採対策
マレーシアはインドネシアからの違法伐採された木材流入を防ぐため、インドネシア以外の木材輸入を許可する方向である。しかし、強力なネットワークで支えられている違法伐採の撲滅への一歩となるのかは疑問である。
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/EF10Ae05.html
2003/05/21  EU:欧州委員会が違法伐採対策の行動計画を採択
欧州委員会は、増加する違法伐採と違法取引に対処するため、森林法の執行、ガバナンス及び取引に関する行動計画を発表した。この計画には、木材生産国におけるガバナンスの改善、EU市場に合法的な木材だけが持ち込まれるようにするため木材生産国との自主的な協力関係の構築、違法伐採の取引に対処するための国際的な協力関係づくりなどが盛り込まれている。
http://europa.eu.int/
2003/05/15  EIA:マレーシア、シンガポールでロンダリングされるインドネシア産違法木材
EIAは、マレーシアとシンガポールがインドネシアの木材を盗み、それを合法的に市場に流していることを極秘調査によって明らかにした。
http://www.eiadb.org/cgi/news/news.cgi?a=133&t=template.htm
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編 集 : 坂本 有希/中澤 健一
 
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