フェアウッドマガジン
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第17号
www.fairwood.jp フェアな木材を使おう
フェアウッドマガジン 第17号 INDEX April 2006
1. シリーズ「森林認証制度のいま in 日本」 第2回 SGEC(後編)
世界のトレンドとなりつつある森林認証制度を日本国内において積極的に普及している各団体の制度と取り組みについてのシリーズ。今回は「緑の循環」認証会議(SGEC)の後編。SGECの認証基準や他の制度との連携・協力などについて説明いただきます。
(『緑の循環』認証会議事務局 河村精司 氏)
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2. フェアウッド建築セミナー
 「住宅ビルダーの木材調達の取組み事例2」 〜物語のある国産材の家を提供
去る2月9日に行われたフェアウッド建築セミナーin名古屋より、阿部建設(株)代表取締役社長の阿部一雄氏の講演録をお届けします。国産材の利用促進には山元、製材業、工務店が一つのパッケージとして施主に対応することが重要と考える阿部建設の取組みを紹介します。
(阿部建設(株)代表取締役 阿部一雄 氏)
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3. WTRN(国際温帯雨林ネットワーク)のアラスカ温帯雨林キャンペーン
 〜国有林からは買わない、私有林にはFSCを求める
アラスカの森はユニークな生態系を育む温帯雨林。そこで生産される木材の44%は日本に輸出されています。私たちと深い関係にあるアラスカの森は、需要圧により過剰伐採が懸念されています。その森を守るためのキャンペーンを展開している国際温帯雨林ネットワークの籾井まり氏にアラスカの森の様子や、キャンペーンについて説明いただきます。
(国際温帯雨林ネットワーク(WTRN) 籾井まり 氏)
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1.シリーズ「森林認証制度のいま in 日本」 第2回 SGEC(後編)
熱『緑の循環』認証会議事務局 河村精司 氏
『緑の循環』認証会議(SGEC)の森林認証基準の考え方
認証基準は、森林の認証の可否を判定するための基礎的な項目です。SGECの認証基準は7項目のうち、生物多様性と水資源問題が主項目となっています。

生物多様性の確保維持は、地域の特性を活かす工夫によってこそ実現できるものです。地域社会と共存する各地の様々な生態系や、地域独特の森林施業の実態、あるいはその地域の社会慣習文化などを認識することから、生物多様性の具体的な行動が始まるといってよいと考えます。

それを如実に示唆しているのが流域単位で考えようとする循環資源や水管理等の課題であり、里山保全の問題です。ひいては"地域材"の課題でもあります。こうした点は、国際的に一律化された基準だけでは理解できないし、十分に対応しカバーすることはできません。

SGECではこうした課題に対し、認証基準の中で「認証単位」という新しい概念で対処するとともに、生物多様性にも一層配慮して、地域特性を重視する考え方が強く意識されているのが特徴です。

"我が国にふさわしい森林認証制度"を立ち上げるべきとの結論となった背景には、このような地域性に対する強い問題意識もあったからです。

認証基準と指標の策定に当たっては以下の諸点が配慮されました。

(1) 国際性を備えることを前提に、モントリオールプロセスの基準・指標などを基本に置き、日本の現状に合うように見直しを行った基準とする
(2) とくに生物多様性など森林生態系の機能維持、水土保全などの環境維持の機能増進に重点を置く
(3) 市民参加やボランティア活動、里山保全など木材生産を主目的としない森林活動にも配慮し、市民への森林空間の提供、環境教育への協力などの森林管理についても認証対象とし、支援指導も行う
(4) 地域の所有形態や森林環境、社会慣習・生活の実態に応じて基準の運用ができるよう「認証単位」の概念を設け地域特性を生かす認証システムとする。そして、その地域にふさわしいモニタリング手法を導入する
(5) 森林施業計画制度や保安林制度等の諸規則や施業要件に整合準拠するとともに書類や図面等の重複審査を避け、認証業務の簡素化・低コスト化に配慮する
(6) 認証森林から産出される林産物が、広く消費者に理解されるよう、地域資源循環型の流通システムを構築し推進すること。都道府県が取り組んでいる地域認証材との連携も図って、シナジー効果(相乗効果)を求める
(7) 現状の森林が基準7項目をすべて満たしているとは限らない。その場合でも対象森林の管理目的に照らし適切であり、かつ、審査の過程で策定された森林整備計画により森林認証の目的を達成しうると評価できるものについては、認証される。それを推進するために、計画から実行へ、見直しから改善へと、林業の現状に即して取り組みを容易にした「環境マネージメントシステム」を取り入れる

以上の考え方に基づき、SGEC森林認証は、7基準36指標を審査の要件としました(詳細は、SGECホームページhttp://www.sgec-eco.org/を参照下さい)。
SGEC分別・表示システム(認認証林産物流通システム)の概要とねらい
認証された森林が、日常的に広く市民に理解され、社会的に支持される仕組みが必要なことは言うまでもありません。そのための具体策が「分別・表示システム」(認証林産物流通システム)に託されています。「分別・表示システム」は、認証森林から産出される林産物を加工・流通・在庫段階で、他の非認証林産物と混在しないように分別し表示することから始まります。基本的には昨今話題のトレーサビリティの考え方に基づいています。

木材は、製材から始まって、複合・混合され、多工程を経て生まれ変わる商品ですから、近時トレーサビリティで話題の食品業界の対応の困難性に匹敵するものです。手間のかかるトレーサビリティではありますが、SGECの「分別・表示システム」が林産業界に広く受け止めてもらえるよう、できる限り簡素化を図り、なるべく多くの事業体が参加できるように工夫されています。

具体的には、認証森林から産出される林産物は、加工・流通・在庫段階で、他の非認証林産物と混在しないように現場で分別され、SGECマークで表示されることです。この作業を的確に行うことによって、ユーザーサイドには、森林の環境管理と認証林産物の工程管理を保証した"信頼と安心"のブランドが届けられることになります。

その結果、SGECの流通システムは、地域材の価値を高めることにも効果を発揮することとなるでしょう。県産材とか地域材認証といってもその内容は、各都道府県、地域によって様々です。品質を保証するもの、寸法等規格を対象としたもの、乾燥レベルを表示したもの、木材強度をグレーディングして認証したもの、産地表示のみをしたもの、あるいはこれらが重複して認証されたものなど様々です。地域材認証といってもその性格は一様ではないと言うことを理解しておかなければなりません。

一方、SGECは環境管理の認証制度であるとの建前に立ち、品質管理まで取り込んだものではありません。従って、各地の地域認証材との提携を合意することによって、認証マークの並行表示または提携表示が可能となるのです。

その結果、SGECの環境管理と、地域材認証の品質管理とが相乗効果を発揮する仕組みとして機能することとなります。各県レベルの地域材認証制度と協調できるSGEC認証林産物として地域の林産業にも期待されることとなるでしょう。
国際的な森林認証諸制度間の連携と協力に関するSGECの考え方
国際認証諸制度との連携・協力についてSGECは以下の方針で取り組むこととしています。

(1)国際的・客観的な制度評価の取り組みに貢献する
国際的に多くの認証制度が並立する中で「相互に差異を認めながらお互いの立場を尊重する」見地に立ち、FAO(国連食糧農業機関)、ITTO(国際熱帯木材機関)などの国際機関や、TFD(The Forestry Dialogue)といった関係者がバランスよく集まる場において、各国各地域の自然環境、市民社会、生活慣習、風土文化など多様性を尊重した各国の森林認証制度が平等かつ公正な立場で発展することに努める。また、将来の包括的な相互承認という展望を維持しながら、当面、客観的な評価を提供する仕組みをつくる国際的な作業に可能な限り貢献することとする。

(2)SGECの国際的な評価を求める
CEPI(欧州製紙産業連盟)の森林認証マトリックス、世銀・WWFのQACC(認証制度の包括的評価に関する調査票)などで開発され提案されている、認証制度を客観的に評価する枠組みに対し、当該枠組みが多くの評価事例を積み重ねられていることを前提として、積極的にSGECの評価を求め、SGEC制度の普及と改善に資する。

(3)アジアでの認証制度との連携をはかる
特に東南アジア、東アジア地域の認証制度の進展が重要な課題と認識し、この地域の認証制度との情報交換を進め、できる限りの協力を行う。
SGECが信頼されるものとなるために
SGECの誕生は、日本の森林・林業界はじめ、経済界やNGOs、学識者など各界各層の賛同を得て、かつてない取り組みによって生まれた成果です。こうした各界の支援に応えるためにも、SGECの資質と信頼を、将来とも維持し保証して行くことを忘れてはなりません。同時に審査機関にあっては、公明かつ公正に認証審査を処すことができる体制作りが欠かせません。

認証制度の普及に関わるサイドとしても、認証審査の概念だけに留まることなく、『緑の循環』が名実ともに地域社会に浸透するよう、認証森林から認証林産物流通に至る、地域資源循環の枠組みを支援し、その活動普及に力を注いでいくことが必要と考えています。

これからは、特に認定事業体の方々との取り組み方如何が、森林認証制度の成否に懸かっているといえます。「地域社会における、緑資源の循環享受の関係が機能する仕組み」、すなわち「緑の循環」が育てられれば、真に我が国にふさわしい森林認証プログラムの目指す方向となります。

そのような森林管理と林業活動改善の動きが、林業地域の現場から盛り上がってくるように、またその枠組みをお膳立てする立場となるのが、この『緑の循環』認証会議(SGEC)に託された役割であると考えています。

国民的な想いによって生まれたSGECが、我が国の森林環境の保全と共に森林・林業・木材産業の体質改善と、そして山村の復権をサポートする処方箋の一つとして普及・発展することを願い、国際社会にも広く貢献できるものとなるよう努めたいので、読者の皆様のご協力・ご支援をお願いします。

※本稿は全国林業改良普及協会発行「『緑の循環』認証会議(SGEC)による森林認証と林業・木材産業、林業改良普及双書N0.146」を中心に著者の承諾を得て加筆・転載したものです。
> 『緑の循環』認証会議 http://www.sgec-eco.org
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2.フェアウッド建築セミナー
     「住宅ビルダーの木材調達の取組み事例2」 〜物語のある国産材の家を提供
阿部建設(株)代表取締役 阿部一雄 氏
阿部建設は2005年で創業100年を迎えました。年間20〜25棟の家を造っています。住宅部門の比率は60〜70%です。2005年には当社のホームページはコンセプトがわかりやすいということで工務店WEB大賞をいただきました。

6年前から東濃ひのきをはじめ、愛知、三重、静岡など近県の国産材にこだわった家造りに励んでいます。国産材は品質もさることながら価格が高く、なぜ国産品を使わねばならないかを説明できる人は少ないと思います。そこで、わが社の方針を参考にしていただければ幸いです。
6年前から国産材住宅造りに取り組む
皆さんの会社で木に対する情報発信をしているところがありますか?(回答1人)。どこの産地の木を使っているか知っていますか?(回答3人)

実は私どもも6年前までは取り扱っている木の産地も樹種にもあまり関心を持っていませんでした。私どもが家を提供している人の年代は30代だと思いますが、彼らの年収は平均年収は約400万円、その年収の借入限度は2,000万円程度です。この世代は4世帯に1世帯は貯蓄ゼロといわれています。ある住宅業者の調査によりますと、住宅新需要件数をみると新築4割、中古2割、賃貸4割に分類されています。新規に家を建てる人の割合は急速に減っています。
消費者に聞く「木造住宅を建てるとしたらその材料は」
図1 消費者に聞く「木造住宅を建てるとしたらその材料は」
私どもは2000年11月より近山運動といって近くの山の木で家を造る運動を行っています。日本では国産材を使う比率は20%をきって18%です。なんと5軒に1軒しか国産材を使ってはいません。世界の木材状況を見ますと、乱伐で環境破壊を起しています。また外国材に極度の頼りますと、価格変動のリスクにさらされます。中国からの供給が何らかの原因で絶たれた場合を想定してみてください。

一方、国内の木材状況を見ますと、人の手が加えられないということで森林破壊が起こっています。これは治水対策上も問題です。イワナは広葉樹林のある川に生息します。針葉樹ばかりではイワナも生息できないのです。

さて、国産材を使うとなれば品質とコストが問題になります。国産材導入のポイントとして乾燥、強度、色、割れ、ロッド、虫害、流通、コストなどがあります。2年で7ヵ所の産地見学をしながら、その実態を把握してみました。

● 導入のポイントから見えた課題・問題点

乾燥    ・・・人工乾燥の方法、本当の乾燥率
強度    ・・・強度を測る機械の少なさ
色      ・・・杉の梁材を中心とした色むら
割れ    ・・・割れた材の強度表現、使用方法
ロッド    ・・・5棟以上、商品の少なさ、柱・梁・板材等、産地不明
虫害    ・・・表に出てこない梁材等の存在
流通    ・・・3m→2.7m
設計ルール・・・ヤング係数不足
コスト    ・・・外材との価格差、明確でない価格
国産材の問題点の解決に向けて
乾燥: 近来人工乾燥に頼ってきましたが、内部の含水率が実際にどのくらいなのか疑問は残るところですが、割れはほとんど生じず狂いも少ないため、当面の間は表面含水表示を信用するものとしています。

強度: 柱、梁のすべてをチェックしています。色、割れはユーザーに事前に徹底的に説明しています。

ロッド: 産地に協力を依頼したり、提案を行ったりしています。また、自分の山のみに頼らずストックを蓄えている山元もあります。

虫害: コスト削減の意味もあり、多少の虫食いがあっても適材適所で使い、その場合、ユーザーに徹底的に説明します。虫食いの木は弱いのではないかとお考えだと思いますが、虫が食う木は強度が強いのが一般的です。

設計ルール: 提供する住宅において材を統一し、基礎を含む構造材などの構造計算に基づくものを作りました。

コスト削減: 調達した材はすべて使うことにしています。産地によってそれぞれ得意な材があるのですが、できるだけすべてを使うように心がけています。
国産材利用で本物の追求
コストの面だけを考えると国産材を使う優位性はありません。また、ユーザーと工務店の志のギャップも大きいのが事実です。国産材利用には、国産材でなければならない物語性がなくてはなりません。また、設計ルールに関しては常に見直していく必要があります。

国産材の利用では、山元、製材業者、工務店の3者に立場の違いがあります。山元は情報開示が少なく、商売気が足りません。もう少しユーザーに歩み寄る姿勢が必要です。製材業者には目利き力と提案力を求めたいと思います。

工務店に関しましては「なぜ国産材を使うのか」に関するポリシーの開示とユーザーへのアピール力を求めたい。また、パッケージによって国産材の利用力を高めてほしいと思います。

次に、わが社の最近の取り組みに関してお話します。
国産材の家1 まず、「本物の追求」ということで、タイプの違う国産材によるモデルハウスを建設してユーザーに見せています。国産材の調達先としてはさらなる産地開拓が必要と考えています。

人工乾燥に疑問を感じているので、天然乾燥+葉枯らし乾燥の導入を考えています。あわせてユーザーへの説明ということで、下草刈り、枝打ち、切り出し体験や植樹体験をしてもらうことによって、山または木、材に興味を持ってもらう、家族の場合は子供の情緒教育、楽しさ、物語性などを伝えようと考えています。
図2 国産材の家(1)
国産材の家2 国産材の家3
図3 国産材の家(2) 図4 国産材の家(3)
材の有効利用のために、木の見せ方を変更することにより材の歩留まりを上げることができます。山元、製材業者とコンタクトしてみますと、木から材になるまでにずいぶん時間がかかります。山元のコストを考え、現金決済方法を高めていく必要を感じています。

国産材をパッケージに組み込んでいくことが重要ですが、国産材でも日時、天候、標高、緯度、経度、誰がなどの履歴認証を明示していく必要があります。

そこで提案なのですが、いくつかの都道府県では、県産材利用者へ補助金を出しています。例えば愛知県は12万円、長野県は50万円です。川上の山元に直接補助金を出すのではなく、ユーザーに補助金を出して、山元を選択する形の県産材利用にしてはどうかと思います。全国的な環境提言などのアピールも忘れてはならないと思います。全国的な環境提言などのアピールも忘れてはならないと思います。

さらに、国のキャンペーンでは、国産材利用60%以上、チームマイナス6%などCO2を削減しようという動きがあります。国産材利用でこのような環境低減に貢献できるということを全国的にアピールしていきたい。これにはNGO/NPOなどのネットワークの協力・共働が重要です。

また、立木のユーザー化と言いますか、立木の段階で個人から山元に資金が流れる方法などを考えたい。
本日は国産材利用に関するわが社の取組みを紹介しましたが、皆さんどんどん山へ足を運んでもらいいと思います。(2006年2月9日「フェアウッド建築セミナーin名古屋」にて)
> 阿部建設(株) http://www.abe-kk.co.jp/
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3.WTRN(国際温帯雨林ネットワーク)のアラスカ温帯雨林キャンペーン
                      〜国有林からは買わない、私有林にはFSCを求める

国際温帯雨林ネットワーク(WTRN) 籾井まり 氏
キャンペーン概要
アラスカの大自然 WTRNは、世界の温帯雨林を守るために2003年に結成された、NGO、科学者、先住民族、そして個人で構成された、世界各地にメンバーを持つ国際的なネットワークです。

本部はアメリカにありますが、アメリカ、カナダ、オーストラリアのタスマニア、チリなどの温帯雨林が存在する場所とともに、日本などの消費国を含む様々な場所でキャンペーンが展開されています。
図5 アラスカの大自然
そのうちのアラスカ温帯雨林キャンペーンでは、アラスカ南東部に位置する世界最大の温帯雨林を守るための活動を行っています。

クリントン政権時代に手付かずの自然を残すとして「道路なしルール」指定対象地域となった、米国最大の国有林であるトンガス国有林を含むこの森林地帯には、生物学的に非常に価値の高い、古代からの原生林が存在しています。しかし、こうした原生林は、建築木材として需要の高い米ヒバやシトカ・スプル
ースの巨木があることから、皆伐(クリアカット)を中心とする持続可能・不可能な伐採の対象となってきました。ここ40年間で集中的に行われてきた伐採により、原生林のすでに70%が失われてしまっています。

アラスカからの製材用の丸太の60%はアジアに輸出されていますが、その最大の輸入国は日本であり、さらに、全体の輸出量の約半分が日本に入ってきています。固くて丈夫なアラスカの原生林(オールド・グロース林)材は、日本で伝統的スタイルの住宅、神社仏閣などその他の建築物に使われているのです。

WTRNのアラスカ温帯雨林キャンペーンでは、日本の消費者・住宅メーカー・製材所・商社のみなさんに、アラスカ材に関しては、米国有林からの木材の輸入をやめ、私有林からのFSC 森林認証制度を受けた木材利用を進めてもらうように呼びかけています。
アラスカの温帯雨林
リフォルニアからアラスカに広がる沿岸温帯雨林は、地球上で最も稀な森林形態であり、生物学的価値の非常に高い地域です。ここはフィヨルド地形の広がる、1000島以上の小さな島で構成されたところです。現在世界に残っているこのタイプの森林地帯のうち約3分の1が、アラスカ南東部にあたる800キロの長さの沿岸沿いに位置し、ここにはトンガス国有林・州政府所有林・私有林が含まれます。この地域全体の3分の2は岩、氷、そして低木植物で構成されていますが、原生の巨木も多く見られます。

アラスカ南東部のこの太古の森はまた、先住民族が生活・伝統文化を維持するために必要な物資を頼っている場所です。彼らの多くはいまだに、生活に必要なあるいは文化的行事としての狩猟・採集を行う場所として、この森林を必要としています。

アラスカの雨林は、海洋環境と森林を循環する生態系を持つことから、米国の他の地域では見られない豊かな野生生物の生息地です。特に5種類ものサケ、そして米国一と言われるヒグマ・クロクマの個体群は、この地域のシンボル的存在です。その他にも、オオカミ、クロオジカ、ハクトウワシなどの鳥類もアラスカの森を住処としています。 また、近海にはクジラ、アザラシ、ラッコなども見られます。
アラスカ雨林の樹種
アラスカ南東部の森林で最も多い樹種は、約60%を占めるベイツガです。次に、シトカ・スプルースが30%、ベイスギ、ベイヒバ、その他の樹種が残りの約10%を占めます(注1)

シトカ・スプルースは、世界中で北アメリカ沿岸の温帯雨林にのみ生息しています。この中で最も商業的需要の高いのがこのシトカ・スプルースと米ヒバです。

注1 文中樹種の学名は以下のとおり
 ベイツガ(ウェスタンヘムロック)− Tsuga heterophylla
 シトカ・スプルース(ベイトウヒ)− Picea sitchensis
 ベイスギ(ウェスタンレッドシダー)− Thuja plicata
 ベイヒバ(アラスカシーダー/イエローシーダー)
  − Chamaecyparis nootkat ensis
アラスカ周辺地図
図6 アラスカ周辺地図
アラスカの商業伐採問題
アラスカ材は高級建材としての需要が多く、アラスカ南東部は過度の伐採の対象となっています。伐採会社は、中でも、原生林を主要なターゲットにしてきました。地球上の他の地域ではあまり見られなくなった巨木が原生林に存在しているからです。この地域では、すでに約40万ha(四国の半分以上)の原生林が失われています。その中でも、伐採の主な対象である国有林のわずか4%を占める巨木群は、約70%がすでに消滅してしまっています。

(1) トンガス国有林の現状:「道路なしルール」
「道路なしルール」は、1999年にクリントン前大統領が提案し、2002年1月に手続きが完了した大統領令です。国有林のうち、原生林、および手付かずの希少生物の生息地域(全米で約2,350万ha)を保護するため、道路建設や商業伐採を禁止する政策でした。

当時、米国有林の51%はすでに開発済みで、残りの半分を守るため、この政策には、最終的に450万件ものパブリックコメントが寄せられ、全米史上最大の支持が集まりました。

ところがその直後ブッシュ大統領の就任で、連邦政府の政策は森林保護から木材産業重視へと一転、大統領は2003年にトンガスを「道路なしルール」対象地域からはずしました。これに対して、米国民から反対の声が25万件も寄せられました。しかし、こうした反対にも関わらず、トンガス内のある島では木材伐採のための道路はすでに8,000km以上もつくられています。

このトンガスの林産品のうち、国内販売は約10%に過ぎず、販売経路のわかっているものだけで約4分の1が日本市場に流れています。

(2) アラスカ全土における私有林の現状
一方、私有林での伐採は、ほとんど規制を受けることなく行われており、ここでの過剰伐採を食い止めることが早急に必要となっています。

ここでの伐採は、アラスカの先住民族が株主となっている会社によるものがほとんどですが、その会社(Sealaska Corporation)は2005年11月に、2006年には伐採を25%削減すること、そして、現在のペースで伐採を続けるとすると同社の所有林からは、たった4-5年分の木材しか残っていないことを発表しています。

こうした持続不可能な状況を脱し、持続可能な森林管理を目指して、同社は現在、FSC(森林管理協議会)認証制度(注2)の取得に意欲を示しています。
(3) 日本市場の重要性
アラスカ材の世界一の輸入国は日本です。米ヒバ、シトカ・スプルース、米スギ、米ツガが日本の伝統的スタイルの住宅や神社仏閣の、主に土台や建具として使用されています。建築用に使用されるシトカ・スプルースの平均樹齢は、300年から1000年です。これほど長い年月をかけて成長した巨木が、日本の建築物に使用された場合、平均して20年から40年で取り替えられています。

シトカ・スプルースはまた、ギターやピアノなどの楽器に欠かせない樹種でもありアメリカのギター業界はシトカ・スプルースの持続可能な管理にサポートを示しています。また、同様の木材は紙パルプ用としても日本に輸入されていて、2002年日本のアラスカ丸太の輸入量は31万m3、米材丸太全体の12%を占めています。
アラスカ材の輸出先
図7 アラスカ材の輸出先(WTRN調べ)
注2 FSC(Forest Stewardship Council, 森林管理協議会)は、世界の森林の責任ある管理を推奨するために作られた非営利団体です。FSC認証は、森林の生態系機能と統一性を維持しつつ森林資源を効率よく利用することで、環境・社会・文化及び経済的により多くの利益をもたらします。FSC森林から生まれる製品は、明確にラベル付けされていることと、企業運営が持続可能であるという保証をすることで、市場においての差別化をはかり、企業に付加的利益をもたらします。
まとめ
アラスカ南東部は、本来なら「手付かずの自然」として大部分が厳しい保護の対象となるべき場所です。地球上の他の地域では見られない独特の生態系を持ち、多様な生物が存在する、生物学的に非常に価値の高い地域です。

また、そこで生活する人々、特に先住民族にとっては貴重な文化遺産であり、生活の糧でもあります。何千年もかけて発達してきた原生林は、一度伐採されると再びもとの状態に戻ることは難しいとされています。特に、現在のようなきちんとした管理計画に基づいていない伐採方法では、二次林に同じ生態系を期待することは不可能です。

日本の消費者はアラスカの原生林破壊に責任を負っているのです。厳しい保護の対象となるはずだった国有林からの木材は購入しない、また、私有林の場合はFSC森林認証を受けた木材を購入する、WTRNはこの二つを日本の木材業者、そして消費者のみなさんにお願いしていきます。
> 国際温帯雨林ネットワーク(WTRN) http://www.wtrc.org
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発 行 : フェアウッドキャンペーン事務局 http://www.fairwood.jp
編 集 : 坂本 有希/三柴 淳一
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